【ダットサン240Z】日産の放った初回ホームラン フェアレディZ 後編
公開 : 2020.05.17 16:50 更新 : 2020.12.08 11:04
重すぎるステアリングと曖昧なシフト
軽さを感じ始めるのは、本当にスピードを上げて走っている時くらい。コーナーが連続する区間では、すぐにステアリングホイールを握る手は痛くなってしまう。
入りが悪く、ゴムのような変速フィールのトランスミッションも悩ましい。しっかり狙って変速する必要がある。だが急いで操作しても問題はない。
こんな癖を持っていても、英国オックスフォードシャーに広がるような、S字コーナーと起伏が続くワインディングを走れば許せる。午後には、プライベート・テストコースのように感じられてきた。
速度を上げすぎると、アンダーステア傾向が強く出るが、キツめの旋回でもフロントタイヤはしっかり路面に食らいつく。ボディロールは以外なほど小さい。
ステアリングは切り始めが少し曖昧だが、角度を増すほど忠実に反応。トランスミッションと同様に、頑張りに応えてくれる。クルマの向きを変える度に、バランスを崩すことなく重心移動が行われる。まるで、つま先で跳ねるボクサーのようだ。
荒れた路面やきついカーブでは、1960年代のスポーツカーらしく、スカットルシェイクが生じて少し落ち着きを欠く。それでも4本のサスペンションは期待に応え、タイヤを路面から離さない。
多くのオーナーは、フェアレディZを手にすると足回りをアップグレードした。ハンドリングを向上させ、シャシーの性能を引き出した。だが、ほぼ新車時のままの240Zでも、充分に良く機能している。
かなり鋭い隆起があっても、上手に衝撃を吸収してくれる。ドライバーの笑顔が絶えないほど、シャープな走りを楽しませてくれる。
速く機敏で、快適で美しく、安い
もしこのダットサン240Zに不満を上げるなら、現在の価格だ。もし状態の良いクルマを選ぶのなら、3万ポンド後半(500万円)は必要になる。もしベストな状態のクルマなら、さらに。
英国では、新車当時もフェアレディZを購入する場合、価格が問題となっていた。1970年代、フェアレディZの英国価格は約2300ポンド。MGB GTなら1500ポンドせずに手に入った。カプリも100ポンド高いだけだった。
ダットサンが英国では売れなかったことは、当然ともいえた。だが、ターゲットとした北米市場では違っていた。
ダットサンは、メルセデス・ベンツ280SLのほぼ半分という、とても訴求力のある値段が付いていた。もし自国のコルベットを手に入れるなら、50%増しのお金を準備する必要があった。ジャガーEタイプやポルシェ911Tなら、もっと。
日産フェアレディZ、ダットサン240Zの長所を書き始めると、きりがない。速く、機敏。魅力的で、快適。そして美しい。北米の地で見事な初回ホームランを決めた。素晴らしいクルマは、悩める人生の特効薬にすらなる。
しかも見事なスポーツカーを表現する際、なかなか用いることがない言葉も、新車時のダットサン240Zになら当てはまった。最も驚かされたのは、その安さにあったのだ。今の取引価格を知っていると、一層驚かされてしまう。
ダットサン240Z(日産フェアレディZ・S30型/1969年−1973年)のスペック
価格:新車時 2288ポンド/現在 5万ポンド(675万円)以下
生産台数:15万6078台
全長:4140mm
全幅:1625mm
全高:1283mm
最高速度:201km/h
0-96km/h加速:8.0秒
燃費:8.5km/L
CO2排出量:−
乾燥重量:1038kg
パワートレイン:直列6気筒2393cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:153ps/5600rpm
最大トルク:20.1kg-m/4400rpm
ギアボックス:5速マニュアル