【民主主義より専制主義?】元F1世界の独裁者 バーニー・エクレストンにインタビュー 前編

公開 : 2020.06.13 07:20

バーニー登場 質問は粘り強く

そして3月初旬、ついにわたしの携帯が鳴った。

「明日11時のご都合はいかがですか?」

エクレストンのデスクの後ろには彼自身の巨大な胸像が置かれていた。
エクレストンのデスクの後ろには彼自身の巨大な胸像が置かれていた。

約束の時間の5分前に彼のオフィスへと到着し、インタビューの準備も整えていたが、安心は出来なかった。

これまでに見たり読んだりしたことのあるエクレストンのインタビューを思い返していたが、彼の真実に迫ることに成功したインタビュアーなどいただろうか?

ベルを鳴らしてオフィスへと足を踏み入れると、秘書が部屋に案内してくれた。

そして、そこに彼はいた。

バーニー・エクレストンその人だ。

非常に小柄だが、ブルージーンズとパリっとした白シャツにキレイに揃えられたアゴ髭を生やし、同年代の誰よりも健康そうな彼は、確かに魅力的でもある。

AUTOCAR(以下、AC):お元気ですか? しばらくメディアにも登場されていませんでしたね。

バーに・エクレストン(以下、BE):いまもここにいますよ。新聞によれば、(新型コロナウイルスによって)われわれのような年寄りが多くなくなっていますが、わたしは大丈夫のようです。

AC:死を恐れているのですか?

2番目の質問としては相応しくなかったようだが、お陰でエクレストンに対する質問の仕方が分かったような気がした。

つまり、聞きたいことは何でも質問して良いが、多くの答えを期待してはいけないということだ。

無駄にしている時間などない。

決して諦めることなく質問し、粘り強く答えを求め続けるしかない。

過去は過去 チャンスはやって来る

BE:いいえ。何も心配などしていません。

AC:年齢を重ねるにつれてより内省的になったとお思いですか?

数十年をかけてエクレストンはF1を単なる寄せ集めから洗練されたショーへと変化させている。
数十年をかけてエクレストンはF1を単なる寄せ集めから洗練されたショーへと変化させている。

BE:内省的にですか? いいえ。

AC:過ぎ去った日を思い返したりはしないのですか?

BE:しません

AC:何故でしょう?

BE:過去は過去だからです。

AC:89歳にしていまも未来だけを見ていると?

BE:つねにチャンスを待っています。チャンスがやって来た時、それが挑戦するに相応しいものかどうか考えるのが好きなのです。ですが、自分からチャンスを探しに行ったりはしません。わたしが計画的に動いていると思うかも知れませんが、まったくそんなことはありません。計画など一度もしたことはありません。

AC:これまでの人生で一度も計画などなかったと?

BE:ありません。チャンスがやって来れば検討してみます。これからも働き続ければチャンスはやって来るでしょう。ずっとそうしてきたのです。

世界でもトップクラスの富豪がその富を築くのに運に頼って来たなどとは俄かには信じられないが、エクレストンとともに時間を過ごせば、彼ならそれも可能だったかも知れないと思えるようになって来る。

非常に頭の回転が速く、その細かな点への拘りは驚くべきものだ。

困難を楽しみ、それを乗り越えるそのやり方にこそ注目すべきなのかも知れない。

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