【民主主義より専制主義?】元F1世界の独裁者 バーニー・エクレストンにインタビュー 中編
公開 : 2020.06.13 16:50
競争と自然吸気エンジンが必要
AC:すべてのレースをご覧になると仰っていますね。F1はこれまでと同じように素晴らしいスポーツだと言えるでしょうか?
BE:オーバーテイクを増やすためのさまざまな試みがありますが、現在のレースもこれまでとそれほど大きく違っている訳ではありません。必要なのは競争です。あるチームがシーズンを席捲するようなことがあれば、それは問題です。
AC:では、なぜ変わらないのでしょうか? レース時間を短くした方がいまのファンには喜ばれるとは思いませんか?
BE:そうした方向性に進むべきではないと思っています。現代のF1には50年の歴史があります。なぜ変える必要があるのでしょう? いまはあまりにも変化が早く、ひとびとが本当にF1に期待するものを知るのは非常に困難です。一般的に若い世代は自動車そのものにあまり興味が無いようです。今後数年のうちに自動車にワクワクするようなことはなくなるかも知れません。EVが普及しても同じようなことが起こるでしょう。
AC:それはF1の終焉を意味するのでしょうか?
BE:そうではありません。だからこそF1をひとびとが楽しめるものにしておく必要があるのです。素晴らしいサウンドと刺激を感じさせる自然吸気エンジンに回帰すべきだと思っています。
AC:それはF1がいまの時代と乖離しているということでしょうか?
BE:いま使われている技術の粋を集めたパワーユニットがどれほどひとびとから注目されているのか分かりません。ひとびとは燃費性能とパワーのどちらにワクワクするでしょう?
行き過ぎた管理が問題
AC:そんなメーカーはF1から撤退した方が良いと?
BE:F1はつねに技術の進歩とともに歩んできたのであり、依然として素晴らしいスポーツです。現在の技術レベルは驚くべきものですが、それがエンターテイメント性に繋がっているでしょうか? そうは思えません。すべてのレースを見ていますが、正直言って批判すべきところもあります。レースそのものではなく、チームやドライバーに対してです。つねに広報担当に一挙手一投足を監視されているようなドライバーを見ると腹立たしくなります。もし、ドライバーが感情を爆発させたい時には、そうさせれば良いのです。こうした広報担当者というのは、まるでドライバーがトラブルに巻き込まれるのを未然に防ぐために存在しているかのようです。
AC:つまり、いまはあまりにも管理され過ぎていると?
BE:そうです。行き過ぎています。そしてルールの問題もあります。つねに安全圏にいて、まるでポイントなど欲しくないかのように、リスクをとることなくフィニッシュすることを最優先にしています。かつてはメカニカルトラブルやリスクを取った結果、1レースで少なくとも6台はフィニッシュ出来ないマシンがありました。いまのレースはピット作業の巧拙で結果が決まってしまいます。
AC:こうした話をしなくてはならないとは残念ではないでしょうか?
BE;その通りです。