【飼い慣らされた野生】ランボルギーニ・ウラカン・エボ・スパイダーへ試乗 前編
公開 : 2020.05.14 10:20
カムカバーを眺められないのが残念
アグレッシブさを肉盛りしつつ、風洞実験での数値も改善されている。フロントのエアインテークが、大型化されていることは瞭然。詳しく見ていくと、新しいキャラクターラインが追加され、面構成にも新鮮さを感じ取れる。
リア周りで最もわかりやすいのは、スロットの入ったダックテール・スポイラー。ヘッドレスト直後から伸びるバットレスのライン上に膨らみがあり、挑発的なリアビューを構成している。
試乗車のボディカラーは、新色のパールオレンジ、アランシオ・クサント。ガンメタルのホイールと相性が良い。
スタイリングで残念なのは、エンジンカバー。クーペではカムカバーを眺めることができるが、スパイダーの場合はルーフシステムの下に隠れている。
ウラカン・エボ・スパイダーも、ランボルギーニ・ディナミカ・ヴェイコロ・インテグラータ(LDVI)と呼ばれるシャシーシステムを採用する。聞こえもカッコ良いが、実際にかなり知的で効果的だ。
全体を司るコンピューターは、ステアリングとアクセルの入力を、ボディロールやピッチ、ヨーセンサーのデータとともに処理。マグネティック・サスペンションや後輪操舵、トルクベクタリング、スタビリティコントロールなどの動作へ反映させる。
ランボルギーニによれば、予測的に処理されるとのこと。エボでは、ダッシュボード中央の8.4インチタッチモニターで、データをリアルタイムに確認できる。
速さで並ぶなら最新のポルシェ911ターボS
このタッチモニターは、グラフィックは美しいものの、操作の反応はあまり良くない。クルマの圧倒的な走行性能とは裏腹に、操作のためにモニターへ視線を落とす時間は、不必要に長くなってしまう。
過去のテストでは、LDVIは不自然な進行方向の変化を生む場面があり、批判的な見方をした時期もあった。だが、目的はシンプルで、クルマの動的性能を向上させること。エボでは従来よりはるかに正確性が増し、敏捷な身のこなしを保証してくれる。
ウラカン・エボと同じペースでスタート地点からゴール地点までを走るには、新しいポルシェ911ターボSなどを選ぶ必要がある。間違いなく、ランボルギーニの目的は達成できている。驚異的に速く、意志のある動物的にすら感じら得るほど。
この印象に反して、エボ・スパイダーの車重は軽くはない。これまでのウラカン・スパイダーよりは、軽くはなっているのだが。
ウラカン・エボのクーペでも、マクラーレン720Sや、はるかにパワフルなフェラーリF8トリブートよりも100kgほど重い。乾燥重量でウラカン・エボ・スパイダーは1542kgとなり、120kgほどの差となる。
実際には、丁寧に比較試乗をしたり、高感度なセンサーで測らなければ、クーペとスパイダーとの走りの差はわからないだろう。それでも、数字としては事実ではある。
概要の確認はこれくらいにしておこう。続きは後編にて。