エンジン不調でのリタイヤ

最高のスタートを切ったのはアストン マーティンを駆るスターリング・モス。シャシー番号0774は出遅れ、先行グループから距離が空いてしまった。

ジャン・ベーラは1時間近く猛追し、レースをリードするDBR1をパス。続く日が落ちる時間帯は、ダン・ガーニーがステアリングを握った。

スターリング・モスのアストン マーティンは、6時間後にバルブ不調を起こす。0774のテスタ・ロッサは走り続けていたが、レース中盤で故障。公式にはギアボックスといわれているが、多くの人の認識ではエンジン不調だった。

トラブルの原因は、エンジンオイル不足が原因だったようだ。事実、世界スポーツカー・チャンピオンシップの最終戦、グッドウッドでの6時間RACツーリスト・トロフィーに先駆けて、ドライサンプ方式へと改められている。

混戦状況に変わりはなく、ポルシェとアストン マーティン、フェラーリも、表彰台の中央に立つ可能性は充分にあった。しかもポイント争いは僅差。フェラーリは18ポイントでリードしていたが、アストン マーティンも16ポイント。ポルシェは15ポイントという状況だった。

グッドウッドは高速サーキットで、ポルシェには不利。1959年はフェラーリとアストン マーティンとの対決となった。

シャシー番号0774の250TRをドライブしたのは、フィル・ヒルとクリフ・アリソン。アストン マーティンDBR1をドライブしたのは、例によってスターリング・モスとロイ・サルバドーリ。ポールポジションを獲得する。

続くトラブルと1960年シーズンへの改良

フィル・ヒルとクリフ・アリソンはペースが掴めず、6番手からのスタートとなった。スタート後、レースをリードしたのはスターリング・モス。0774の250TRは、1周目でバルブが破損し、リタイアを喫した。

レーススタート直後、4台から3台体制へとプレゼンスを落としたフェラーリ。優勝は遠のいた。アストン マーティンは、1度のピットストップで7秒の短縮につながる、エアジャッキを備えており、技術的にも有利だった。

もちろん、アストン マーティンも順風満帆だったわけではない。エギゾーストのそばでピットクルーがガソリンをこぼし、モスがドライブするDBR1は出火。ピット全体に炎が広がった。

モスはすぐに別のDBR1に乗り換え、レースを続行。見事に優勝を遂げたアストン マーティンだったが、レースからの撤退という決断は、周囲を驚かせた。

1960年シーズンへ向けた冬、レギュレーションが変更される。250TR 59/60にも手が加えられた。

シャシー番号0774の250TRは、フィル・ヒルとクリフ・アリソンのドライブで開幕戦のブエノス・アイレスに出場。同じワークスチームのシャシー番号0770とともに戦った。

0774の250TRは、ガーニーがドライブするマセラティ・ティーポ61、バードケージを追いかけるが、ギアボックスの不調でリタイア。0774はサーキットに残り、シーズン初優勝へとつなげた。

画像　フェラーリ250テスタ・ロッサ　全29枚