【改めて探るF1の魅力】今年で70周年 なぜ自動車メーカーは、フォーミュラ1に一生懸命になる? 前編

公開 : 2020.05.30 20:50  更新 : 2021.07.12 18:32

スピードの追求が発展の原動力

だが、なぜ自動車メーカーはF1に魅力を感じるのだろう?

ツーリングカーやラリー、それにスポーツカーレースとは違い、つねに最先端技術の結晶とも言えるF1マシンが、公道用モデルをベースに開発されたことなど一度としてなかった。

フェラーリ312T
フェラーリ312T

そして、チームや自動車メーカーがサーキットでのスピードを追求することによって、F1マシンはさまざまな発展を見せて来たのだ。

1950年代後半、より優れた重量配分を求めた結果、エンジンは車体後部に搭載されるようになっている。

1960年代には革新的なエアロダイナミクスによって巨大なウイングが与えられ、1970年代に入るとエンジンがマシンの構造部材となり、「ウェッジ」デザインが導入されている。

1980年代になってさらなる軽量化と強度が求められると、カーボンファイバーやその他の素材が使用されるようになり、グラウンド・エフェクト・デザインが一世を風靡している。

1990年代にはセミオートマティック・ギアボックスとフルアクティブサスペンション、そしてさまざまなドライバーアシストが試されることとなった。

21世紀に入ると、主催者側はスピードを抑制する方向へと向かっているが、コンピュータとシミュレーション技術の発達によりエアロダイナミクスはますます複雑化し、さらに大胆な新素材の活用も進んでいる。

そして、市販モデルで使用されているハイブリッドとの関連性はあまり見られないものの、近年F1でもハイブリッドパワートレインが採用されるようになっている。

技術的恩恵は確実に存在

こうして発展してきたF1テクノロジーだが、市販モデルで採用されている技術と偶然の一致を見せることはあっても、実際にはほとんど関連性などなかった。

自動車メーカーが電動化と排ガス削減に向け急速に歩みを進めるなか、現在のF1マシンが積む1.6Lハイブリッドターボは市販車とはまったく関連のないものとなっている。

1980年代のF1マシン
1980年代のF1マシン

それでも、F1はいまも世界中の主要な自動車メーカーの関心を集め続けているのだ。

何故だろう?

まず言えるのは、例え一見関連が無いように見えても、F1や他のモータースポーツから市販車にもたらされる技術的な恩恵というものが確実に存在しているということだ。

もちろん、それがもっとも明白な形で表れているのがハイパーカーの世界だ。

間もなく登場するアストン マーティン・ヴァルキリーやメルセデスAMGプロジェクト・ワン、そしてゴードン・マレーのT50(彼が1978年にF1で提唱した「ファンカー」コンセプトの現代版だ)は、まさにお金に糸目をつけない「公道に降り立ったF1」プロジェクトの最新例と言える。

そして、こうした超希少なモデル以外でも、F1由来のテクノロジーは驚くほど多くのモデルで目にすることが出来る。

番外編1:F1の起源

第二次世界大戦終結後、欧州全域ではさまざまなルールのもとレースが開催されていたが、そんな状況も国際自動車連盟(FIA)がフォーミュラAとB、そしてCの3つのクラス分けを示したことで終わりを告げている。

だが、A、B、そしてCのクラスはすぐに数字に置き換えられることとなった。

オイルにまみれたツナギ姿から生まれたF1はハイテクの生まれる場所へと発展している。
オイルにまみれたツナギ姿から生まれたF1はハイテクの生まれる場所へと発展している。

1949年、バイクの新たな世界選手権制度に刺激を受けたFIAは、翌1950年にドライバーのワールドチャンピオンシップを創設している。

この年22戦が予定されていたものの、実際に選手権として開催されたのは、まったく異なるルールで行われたにもかかわらず認定されたインディ500を含め、わずか7レースのみだった。

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