大きな話題を巻き起こすデザイン

フランクは、1950年までラゴンダとアストン マーティンのデザインを手掛けた。ニューポート・パグネルへアストン マーティンが拠点を移すまで、感情豊かで美しいボディラインを描き出し続けた。

ちなみに、活動拠点の移動を望まなかったフランクは、アストン マーティンを退社。航空業界へ移籍している。

一新されたラゴンダLG45は、さらに2台へアップグレードを施し、1936年のラリー・モンテカルロへ参戦。アランは、ラリードライバーとして経験豊かな妻のドリーンと一緒に、LG45をドライブした。ラトビアのアイスバーンでスリップするものの、41位で完走している。

保守的な内容だったLG45だったが、フランクは続くLG45ラピードで自由なデザインを許された。ラピードは、1936年のモーターショーでお披露目された。

エグゾーストパイプはボディから露出し、アールデコ風のサイドモールディングに、絞られたテール。大きな話題を巻き起こすデザインだった。

特徴的な折り目の入ったフェンダーのラインは、フィーリーのゴシックアーチと呼ばれた。20年後のアストン マーティンDB3まで、彼のデザインスタイルとして知られるようになる。

一部からは斬新すぎるという評価を受けたが、クルマの性能は見た目に負けず速かった。サンクション3仕様のメドウズ製エンジンは、152psを発揮。最高速度は172km/hに届いた。

ロールス・ロイスより優れたV型12気筒

続いてWOベントレーは、V型12気筒エンジンを設計を進めた。アラン・グッドの世界最高のクルマを作りたい、という要求に対して応えたのだ。

1935年、ロールス・ロイスはV型12気筒を搭載したファントムIIIを発表する。排気量7.3Lという大きなエンジンのパワーは、3000rpmで162psと物足りないものだった。

そもそも、高級なサルーンやリムジンのためのエンジン。プッシュロッド・バルブギアとロングストローク型の設計は、WOベントレーに影響は与えなかった。

WOベントレーは、以前に所属していたロールス・ロイスより優れたエンジンを生み出すことを決意。当時のどんなエンジンより、先進的なものを目指した。

そしてV型12気筒を搭載したラゴンダV12が発表されたのは、1936年。WOベントレーが移籍してからわずか15カ月後だった。展示されたサルーンは1台。生産準備が整う前のリリースだった。

ラゴンダ社の歴史を研究するアーノルド・デイビーは、エンジンは手作りで急ごしらえされた、と考えている。実際、量産車が初めて工場を出発したのは、1938年の春まで待つことになる。

それでもV12エンジンは、非常に高い評価を集めた。WOベントレーが手掛けたものの中で、最高傑作と呼べるものだった。

排気量は4.5Lで、シリンダーは75mm×83mmのショートストローク型。ピストン速度を下げることで、回転数は5500rpmまで許容した。当時のエンジンの中では、かなりの高回転型だ。

画像　ラゴンダLG45とV12ラピード　全25枚