【世界最高を目指したV12】ラゴンダLG45とV12ラピード 戦前のクラシック 後編

公開 : 2020.05.30 16:50  更新 : 2020.12.08 11:04

甥が大切に乗る2台のラゴンダ

アラン・グッドの甥となる、チャールズ・グッド。彼は2台のラゴンダを所有している。

1台はダークグリーンのラゴンダLG45ツアラー。アランと妻とで、1936年のラリー・モンテカルロを走ったクルマ、そのものだ。そしてもう1台は、赤の数少ないラゴンダV12ラピード

ラゴンダLG45(1935年)
ラゴンダLG45(1935年)

チャールズ・グッドの父親は、彼が5才の時に航空機事故で他界。叔父のアランが父親代わりになったという。だが、アランも13カ月後に亡くなってしまった。

チャールズは、これまでにベントレー4 1/2リッターから7Lのコブラまで、さまざまなクルマを所有してきたが、現在のコレクションはラゴンダ2台のみ。英国南部のハンプシャーの道を一緒に走らせると、魅惑的なペアとなる。

ラゴンダLG45に搭載されるメドウズ製エンジンは野生動物のようにたくましい。太い低回転域のトルクのおかげで、運転はしやすい。以前のオーナーにより、中央に付いていたアクセルペダルは、ブレーキの右側に移設されていることも、ありがたい。

ステアリングのギア比は高いものの、操舵感は軽く、運転中の反応も正確。トランスミッションには、3速とトップにシンクロメッシュが備わる。回転数を正しく掴めば、右手で操作するシフトレバーで心地よく次のギアを選べる。

雪上での走行性能を高めるため、2台のラリー・モンテカルロ仕様のLG45には、オープンタイプのフェンダーが付いている。それも優雅さを加えている要素の1つ。

遥かに現代的に感じられるV12ラピード

幅の狭いコクピットの着座位置は高い。ビンテージ感のある雰囲気だが、車内には4名分の空間がある。

サスペンションは硬すぎず、ブレーキの効きは安心感がある。背の高いラジエターが収まる、長いボンネットの先には、大きなP100のヘッドライトが2灯。ラゴンダを代表するような眺めだ。

ラゴンダV12ラピード(1938年)
ラゴンダV12ラピード(1938年)

運転席へ座れば、エストニアのタリンからモナコのモンテカルロを目指した、アラン・グッドの体験が重なるように感じる。そして、このLG45とV12ラピードとの完成度の違いにも驚かされる。

2台の誕生は3年違いでしかないが、V12ラピードの方が20年ほどは現代的。それはすべて、WOベントレーが設計した素晴らしいV型12気筒に理由がある。

エンジンは、とてもスムーズに回転する。スターターボタンを押すと、静かにエンジンは目を覚ました。レブカウンターを見なければ、その息遣いに気付かないほど。

走り始めると、低回転域でのトルクはメドウズ製の直列6気筒ほど潤沢ではない。積極的に周りたがるエンジンで、3000rpmを超えた辺りでシルキーなフィーリングとともにパワーが湧き出てくる。

ボディサイズは大きいものの、回転数が上がり速度が増すほどコンパクトに感じられてくる。機敏で素早い。

V12ラピードのステアリングはギア比が低く正確。乗り心地はLG45よりモダン。路面の良くない英国郊外の一般道でも、トーションビーム式のフロントサスペンションが音を上げることはない。

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