【世界最高モデルの最有力】ベントレー・フライングスパー 6.0L W12気筒 前編
公開 : 2020.05.24 08:50
四輪操舵システムが生む扱いやすさ
スポーツ・モードを選択すると、ボディロールやスクワット、ノーズダイブをほとんど打ち消してくれる。フライングスパーでサーキットを攻めるドライバーは、限られるだろうけれど。
標準の調整式エアサスには4モードが用意され、設定によって不満のない足回りの変化をもたらす。さらに今回の試乗車には、オプションとなる電圧48V制御のアクティブ・ロール・コントロール・システムも搭載。姿勢制御は一段と引き上げられていた。
恐らく、英国ならシルバーストーン・サーキットを走る以外、スポーツモードは硬すぎると感じるだろう。コンフォートならその名の通りの、快適さを味わえる。ただし路面状態が特に悪い場面では、目の肥えたリアシートのオーナーは、弾むような動きを感じ取るかもしれない。
やはり選ぶならベントレー・モード。フライングスパー本来の落ち着きを取り戻す。初めからこれにしておけば、間違いない。
パワーステアリングは電動式。油圧式に拘りを持つ従来的なドライバーの中には、疑問を感じる人もいるだろう。
この可変レシオをもつシステムは、四輪を操舵する。ロックトゥロックは2.5回転以下とクイックで、最小回転直径は11mとタイト。ドライバーへのストレスを軽減してくれるうえに、フィーリングはとても自然。
直進付近では素晴らしい精度を持ちつつ、タイトコーナーでの操作も容易。ステアリングホイールには、しっかりとした感触が伝わってくる。厳密に操舵感の自然さを突き詰めていくのは、やめておこう。
フライングスパーに最適化された骨格
どんな評価をもってしても、全長5.3mのクルマは小さくない。それでも四輪操舵の助けもあり、ラグジュアリーカーを日常的に運転するドライバーにとって、扱いやすいと呼べる範囲には何とか収まる。オーナーでも、運転手でも。
週末の混雑したスーパーマーケットの駐車場は、少し場違いかもしれない。強く望めば、駐車はできるけれど。
既知の事実だが、従来のベントレー製クーペやサルーンは、フォルクスワーゲン・グループのプラットフォームを用いてきた。このフライングスパーも、ポルシェ・パナメーラと構造部分を共有する。
今までと違うのは、ポルシェが新型パナメーラの設計を開始した時点で、フライングスパーの存在も考慮されていたこと。ホイールサイズやブレーキのクリアランス、サスペンションのストローク量、エンジンの搭載位置など、重要な要素はベントレーとして最適化できている。
プロジェクトリーダーのピーター・ゲストが話すとおり、アルミニウム・ストラクチャーと単純には呼べないほど複雑な設計を得ている。長く強固なボディの内側には、アルミニウムだけでなく、複合素材や様々な種類のスチールが適材適所で用いられている。
ボディパネル自体は、スーパーフォーミング成形された、アルミニウム。相当に豪奢な内装の設えと、充実した装備を備えつつ、大きな車体の重量は2437kgに抑えてある。
この続きは後編にて。