【メルセデス・ベンツ vs BMW】コンパクトモデルぞくぞく投入の舞台裏 商品&販売戦略やや違う

公開 : 2020.05.27 05:50  更新 : 2021.10.22 10:15

小型投入 ブランド力の維持が課題

メルセデス・ベンツBMWは、この数年間で販売台数が急増した。

2019年の世界販売台数は、メルセデス・ベンツブランドが234万台、BMWブランドは217万台だ。メルセデス・ベンツは2020年に200万台を目標にしていたが、4年前倒しで達成した。

大きなエンブレムがフロントグリルの中心にあるスタイルを気にするユーザーもいる。
大きなエンブレムがフロントグリルの中心にあるスタイルを気にするユーザーもいる。    メルセデス・ベンツ

現時点でメルセデス・ベンツAクラスなどは、トクした気分にさせる。憧れの「ベンツ」が、以前に比べると大幅に求めやすい価格で手に入るからだ。

しかし今の状態が続くと、次第に普通のブランドに落ち着いてくる可能性もある。

メルセデス・ベンツが割安な車種をそろえる一方、フォルクスワーゲンは内外装や乗り心地の質を高め、ベーシックとプレミアムの境目がわかりにくくなってきたからだ。

特に今のメルセデス・ベンツは、大きなエンブレムをフロントグリルに装着して、グッチとかフェンディと大書きされたTシャツを思わせる。

プレミアムブランドの伝統を考えれば、エンブレムをフロントグリルに収めるのは空力を突き詰めたSL系で、そのほかは今のSクラスやE 450 4マティック・エクスクルーシブのようにボンネット上にマスコットを立てるのが正しい。

販売店によるとは以下のようにコメントしてくれた。

「今でも大きなエンブレムを嫌うお客様は少なくないですね。『ブランドをひけらかしたくない』と言われます」

「そこで交換を希望されることもあるが、今はグリルに衝突被害軽減ブレーキのセンサーが内蔵され、交換できても高額になってしまいます」という。

たかがエンブレムの話だが、伝統を受け継ぐブランドの象徴でもある。

本来のメルセデス・ベンツはマスコットを立てたSクラスで、それ以外は大量な販売をねらっているとも受け取られる。

いつまでも「メルセデス・ベンツが欲しい」と思わせるブランドであってもらいたい。

記事に関わった人々

  • 渡辺陽一郎

    Yoichiro Watanabe

    1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。買い得グレードを見極める執筆も多く、吉野屋などに入った時も、どのセットメニューが割安か、無意識に計算してしまう。

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