【5.2L V12か2.0L 直4か】ジャガーXJ-Sとロータス・エリート 1970年代のGT 後編

公開 : 2020.06.06 16:50  更新 : 2022.08.08 07:39

初めの1年で4万8000kmを走った

大人になったワトソンは、S2のヨーロッパを購入。続いてエランと、エラン・フィックスド・ヘッド・クーペを手に入れた。「いつもオリジナルのロータス製部品を選んでいました」

子育てが始まると、ワトソンは1984年にアイスブルーのロータス・エリート・リビエラを購入。最初の1年で、4万8000kmを走ったという。整備は9600km毎に受けていた。「整備費用は1万1000ポンド。マセラティ・ボーラが買える金額です」

ジャガーXJ-S/ロータス・エリート
ジャガーXJ-S/ロータス・エリート

「今まで20万ポンド(2700万円)くらいは投じています。いまでも2万ポンド(270万円)ほどの価値がある、ベストの状態です」

このエリートは、専門家のポール・マティの手によってレストアを最近受けた。トップギアに入れれば穏やかな高速巡航も楽しめる。

中間ギアで回転数を高めれば、快音を響かせてアグレッシブにもなる。112km/hを超えるまで、ジャガーXJ-Sと引けを取らない加速を披露した。

エリートはXJ-Sとは対象的な、活発で深みのある4気筒らしいサウンドを響かせる。直線ではXJ-Sの方が速いかもしれないが、入り組んだ地形の道では、エリートの方が先を行くはず。

一体感と落ち着きがあり、安定性も高い。ボディロールやアンダーステアは最小限。操縦したとおりのナチュラルな振る舞いは、リラックスもできる。運転姿勢に優れ、乗り心地も快適。贅肉が削がれ、レスポンスは常に予想通り。

穏やかでバランスの良いXJ-S

ジャガーXJのサスペンションとステアリングに手を加え、引き締まった設定を得たXJ-S。サルーンよりひと回り小さく、扱いやすい。

ステアリングホイールの重さは適度で、正確性も高い。ダイレクトさには欠ける。乗り心地は柔らかく、15km/hでも180km/hでも、同じように滑らか。賛否の大きい、安っぽい塗装のドアフレームながら、風切り音は不気味なほどない。

ジャガーXJ-S/ロータス・エリート
ジャガーXJ-S/ロータス・エリート

エリートよりはるかに重く大きいXJ-Sだが、バランスはとても良い。ドライバーの運転する自信を引き出してくれる。アクセルを踏み込みすぎたり、ブレーキ操作が遅れても、穏やかな挙動のまま。XJ-Sは限界領域まで攻め立てて走るクルマではない。

ロータスもジャガーも、筆者は大好きだ。実際に所有するということ以上に、自動車メーカーとしての考え方が好きなのだと思う。

誕生から50年を迎えようとしている2台。欠点がないわけではないが、クルマとしてのコンセプトに注目し、お祝いしたい気持ちになる。

錆びやすいシャシーと、欠陥のあるリアサスペンション構造という、共通の弱点も抱えている。どちらのクルマのオーナーであっても、品質には悩まされることだろう。

1台を選ぶとなったら、筆者はジャガーを取る。XJ-Sは、ブリティッシュ・レイランドのフラッグシップモデル。時代錯誤な感覚で生まれた、世界で最もラグジュアリーなクーペの1台だった。品質問題以前のところに、XJ-Sの課題はあった。

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