【詳細データテスト】ランボルギーニ・ウラカン 発進加速以外はRWDに軍配 日常遣いも苦痛なし

公開 : 2020.05.31 10:20

内装 ★★★★★★★★☆☆

SGANCIO。英語でいえばリリース。カーボンフレームを用いたスポーツシートの、座面前端中央でひときわ目を引く、アルミ素材のレバーに深々と刻まれた文字だ。

激しく寝かされたフロントウインドー越しの、トーチカを思わせる前方視界と、傾斜した独特のダッシュボードを備え、ダークで胸騒ぎを覚えるウラカンの車内。そこへ身を滑り込ませる体験は、このうえなくドラマティックで、この手のクルマらしさを感じるものだ。

ドライビングポジションは、従来のウラカンから改善されている。しかし、使い勝手はライバルに及ばない。良くも悪くも走りに徹したクルマだと思い知らされる。
ドライビングポジションは、従来のウラカンから改善されている。しかし、使い勝手はライバルに及ばない。良くも悪くも走りに徹したクルマだと思い知らされる。

しかし、座ってみるとそのシートが、このクルマにおいて特筆すべき問題のひとつを是正してくれたことにこそ喜びを見出せる。もはや、高いドライビングポジションに苛立つことはない。

ホールド部が大きく突き出したスポーツシートは、まるでフロアにボルト留めされたようにさえ感じられる低さでありながら、スライド幅は広い。

とはいえ、脚の長いドライバーの手がステアリングに届かなくなるほどではない。シートを大きく後ろへ引いたときには、これまでどおり大きく取られているステアリングコラムの調整幅がものをいう。座面が低くなったことで、ヘッドルームにもいくらかの余裕が生まれた。

エンジンスタートボタンを押して5.2LのV10ユニットを目覚めさせるまでもなく、このウラカンはコクピットの設えで、本気のドライバーズカーであることをわれわれに教えてくれるのだ。

ただ、トリムにはやはり設計の薄っぺらさが払拭できていない箇所もある。たとえば、ノーズリフトシステムやESC、ウインドウなどズラリと並んだトグルスイッチとエアベントが、あまりにも接近しすぎている点だ。

また、力感を誇張する無機的で角ばった面構成のキャビンは、フェラーリF8トリブートより乗員に優しくない。ランボルギーニはセンターコンソールにきわめて浅いストレージトレーを設置したが、アームレスト兼用の小物入れほどの収納力はない。グローブボックスにいたっては、確信犯かというほど小さい。

タッチ式ディスプレイが設置されるセンターの構造部の下には、携帯電話を置けるスペースがいくらか用意されている。さらに、棚状になったシートの背後には、1泊分の荷物を収めたバッグくらいは入る。

それでも、フロントトランクの100Lというサイズは小ぶりだ。これはプッシュロッド式サスペンションの弊害で、その採用が恨めしく思えてくる。

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