【詳細データテスト】ランボルギーニ・ウラカン 発進加速以外はRWDに軍配 日常遣いも苦痛なし
公開 : 2020.05.31 10:20
走り ★★★★★★★★★★
ランボルギーニの国際試乗会ではテレメトリーを詳しくチェックできないが、公表されるデータはいつも信用できるものだ。
それだけに、この後輪駆動ウラカンも、ゼロスタートから3.3秒で100km/h、9.3秒で200km/hに達し、トップスピードは間違いなく325km/hに届くはず。ランボルギーニのエントリーモデルとして、このスペックは過去に類を見ない。
4WDのエヴォは0−100km/h=2.9秒と、RWDよりさらに速い。しかし、いったん走り出し、フロントのトラクションの恩恵が小さくなってしまえば、RWDもほとんど見劣りすることはない。どちらのクルマも、胃袋がひっくり返りそうなほどの速さを見せつける。
結局、馬力差は荷重比でみればトンあたり11psしか違わないのだ。その点では、2台ともマクラーレン570Sにも後れを取っている。さらにいえば、マクラーレン720SやフェラーリF8トリブートはもっと優れた数字をマークする。
ところが、ことエンジンの出力特性に関しては、それらライバルのどれもウラカンの敵ではない。V10ユニットは、期待通りのリニアでピュアなデリバリーで、8500rpmのレッドラインまで回り続ける。
これに匹敵するのは、ポルシェ911 GT3が積むレース由来の4.0Lフラット6くらい。そのフィールは自然で満足感のあるものだ。ただしこのエンジン、しびれるようなメカノイズが、新たに装着されたフィルターによってやや損なわれてしまったが。
ランボルギーニのV10は、その大排気量も衝撃的だ。トルクは、最大値の70%をたったの1000rpmで発生する。それだけに、過給機を備えていなくても、足首をちょっと動かすだけで強烈なパフォーマンスを味わえる。
18世紀の英国を代表する文学者、サミュエル・ジョンソンの名言をもじって評するなら「このエンジンに飽きた者はクルマに飽きた者だ」ということになる。ロンドンについて語った本家は「そこには人生が与えうるものすべてがあるから」と続くのだ。
しかしこのパワートレインは、混乱に対処できるマナーも備えている。エンジンが突如としてシャシーを圧倒することは決してなく、急激な操作をしなければ、ドライコンディションではこの上ないトラクションを発揮する。
デュアルクラッチ式トランスミッションは、常に可能な限り高いギアを選びたがるきらいはあるが、全開時には閃光のごときクイックな変速を見せつける。それが公道向けのストラーダモードで穏やかに走ろうと思えば、その作動ぶりはゆったり落ち着いたもので、市街地を走る相棒としても気楽に付き合える。耳の後ろ30cmにあるものの存在を、忘れることすらありそうなほどだ。