【改めて探るF1の魅力】今年で70周年 なぜ自動車メーカーは、フォーミュラ1に一生懸命になる? 後編
公開 : 2020.05.31 20:50 更新 : 2021.07.12 18:32
新型コロナウイルスによって開幕延期を余儀なくされている2020年のF1ですが、今年は70周年の記念すべきシーズンとなります。1950年のスタートからその歴史を振り返りつつ、自動車メーカーを惹きつける秘密を探ります。
もくじ
ーいまもルーツを反映
ーハイパフォーマンスモデルを創り出す動機に
ーイメージにも影響 実は何も変わっていない?
ー番外編2:F1ワールドタイトル70年の歴史 その1
ー番外編2:F1ワールドタイトル70年の歴史 その2
いまもルーツを反映
マクラーレンは1981年にマクラーレンMP4/1で初めて登場したカーボンファイバー製シャシーを市販モデルにも採用しており、1990年にフェラーリ640が初採用したステアリングホイールにパドルシフトを持つセミオートマティック・シーケンシャルギアボックスは、いまや一般的な存在だ。
さらに、カーボンファイバー製ブレーキやアクティブサスペンション、そしてドライバーアシストシステムを採用するモデルは増え続けている。
そして、ターボエンジンやABS、四輪駆動システムといったF1以外から登場したテクノロジーであっても、F1を通じて市販モデル向けの改良が進められることとなった。
いまもこうした状況は続いている。
最近インタビューを行ったルノーF1チームのトップ、シリル・アビテブールにルノーがF1に関与する理由を問うと、「コネクティビティ、電動化、AI、燃費性能…」と、関連する新たなテクノロジーの名を上げて質問に答えてみせた。
こうした市販モデルとの関連性は個別の技術に留まらない。
コンセプトそのものがF1から産み出され、磨かれてきたモデルというものも存在するのであり、その最高の事例がモータースポーツにルーツを持つ自動車メーカーによって生み出されたものだ。
エンツォ・フェラーリとロータスの創始者、コーリン・チャップマンが自らのロードカー部門を創設したのは、レースの活動資金を捻出するためであり、こうしたメーカーが作り出すモデルはいまもそのルーツを反映し続けている。
ハイパフォーマンスモデルを創り出す動機に
しばしば引用されるチャップマンの「シンプルに、そして軽く」という哲学は、最速のレーシングマシンを創り出そうという情熱から生み出されたものだが、ロータスのロードモデルにも適用されている。
ロータス・エリーゼやエキシージ、そしてエヴォーラといったモデルはいまもこの哲学を体現しており、F1とは直接的な繋がりのないマツダMX-5(日本名:ロードスター)やアルピーヌA110などにもこうした精神を見ることが出来る。
そして、近年マクラーレン・オートモーティブが存在感を高めているのは、カーボンファイバー製モノコックといったF1技術を見事にロードゴーイングモデルに活用する能力があったからだ。
だが、こうした市販モデルにも採用されている革新的技術を抜きにしても、自動車メーカーにとってF1とは自らのブランドと最先端テクノロジーを開発する能力を誇示する格好の舞台であり続けている。
さらに、F1との関連性を訴求したいという思いが、自動車メーカーにとってハイパフォーマンスモデルを創り出す動機ともなっているのだ。
ルノー・メガーヌRSやホンダ・シビック・タイプRといったドライバーズカーは、例えF1がなくとも登場したかも知れないが、公道とサーキットの繋がりをより強めたいと考えているメーカーにとって、こうしたモデルは欠くことの出来ない存在と言えるだろう。
さらに、F1の宣伝効果も見逃すわけにはいかないのであり、それは自動車メーカーだけに留まらない。