【最速の911は最速のクルマ】ポルシェ911ターボSへ英国試乗 止まらない高速化

公開 : 2020.06.01 10:20

四輪操舵のお手本と呼べるステアリング

もちろん、制動力自体の強さも秀抜。特に意識せずとも、コーナーに最適な侵入速度へと導いてくれるようですらある。

最適なレシオが与えられたステアリングは正確で、ナーバスなところは一切ない。通常の992型カレラ以上にフィーリング豊かで、情報量も多い。

ポルシェ911ターボS(英国仕様)
ポルシェ911ターボS(英国仕様)

四輪操舵システムは、お手本といえる仕上がり。リアタイヤが、驚くほど深い角度で切られていることを想像できないほど、コーナリングは自然だ。

低いドライビングポジションを生んでいるのは、部分的に電動の、レトロなデザインを得たシート。ポルシェらしくほぼ完璧な体勢を取れるが、高身長のドライバーは、もう少しステアリングの位置を調整したいと感じるかもしれない。

上半身部分のサイドサポートは、もう少しあっても良い。とはいえ、ターボSの能力を引き出すのに不満のない環境ではある。

8速PDKのギア比は特にショートレシオではないが、強力な3.8Lエンジンを持ってすれば問題にはならない。1速から4速まで、フルスロットル時の変速は瞬間的に終わる。

32km/hで走行中、16km/h(10mph)毎に速度を増やそうとアクセルを踏む。だが、速度を読み上げる前に、気が付けば80km/hを超えていた。そして次の瞬間には、96km/hを表示している。

この加速感に慣れるには、しばらくの時間が必要だろう。乾燥した路面では、911ターボSは常に正確で、乱れることがないこともわかってくる。

特別な意味を持つ911のターボ

サスペンションには2モードが用意される。路面の隆起や波打ちを通過しても、印象的なほどに均してくれる。これに並ぶスポーツカーは、極めて少ない。だが、どちらを選んでも引き締まった設定に変わりない。

ターボSを高速で走らせる体験は、痛快でゾクゾクするものだ。一方で車重やボディサイズが影響してか、一体感や瑞々しさにはやや欠ける。

ポルシェ911ターボS(英国仕様)
ポルシェ911ターボS(英国仕様)

911ターボSの真価を味わうには、相当に速度を高める必要がある。ドライバーを含めると1700kg以上の車重を考えると、たじろぐほどの速度域だ。それでも、硬いサスペンションは我慢を強いる。

車重のかさむクルマを制御下に置く以上、滑らかな路面以外では、315という極太のリアタイヤからは大きなノイズが湧き立つ。硬められた足腰で、乗り心地は落ち着かないところがあり、不快さを感じる場面もある。

多くのシーンで911ターボSは、ロードレーサー感が強い。長距離ドライブも楽しめる、スーパー911ではない。本気のロードレーサーが欲しいなら、実は911 GT3が間もなく控えている。

世界を驚かせるスピードを実現しているだけあって、最近のターボSは価格も高い。それでも、強い人気を得るはず。

911ターボには、1975年まで遡る伝統がある。極端な性能を誇るクルマを欲するドライバーは、少なくない。特にポルシェ911の場合、ターボには特別な意味が含まれている。

俯瞰すると、最新の992型ポルシェ911ターボSには、2つの長所と1つの短所があるように思う。

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