【もうすぐ発表だったのに】レクサスIS発表、直前で延期 世界情勢が理由 いったい何を意味? コロナ以外も
公開 : 2020.06.08 05:50
この時期に発表=ブランドへ逆効果
レクサスおよびトヨタが、新型IS発表で危惧したのは、ブランドイメージに対する逆効果ではないだろうか。
近年、レクサスは「アメイジング(驚き/感動)」をブランド訴求の中核に据え、クルマというハードウエアの上質化/高性能化と、顧客に対する様々生活体験を結びつける活動を世界各地で推し進めてきた。
そこでは、攻めの姿勢を明確にしてきた。
今回の新型ISについても、アメリカレクサスのメディア専用サイトで6月1日にティザーを公開した際、「Dressed to Thrill (スリルを纏う)」というキャッチコピーを打ち出している。
しかし、アメリカ各地での抗議デモや暴動が続く中、こうした宣伝広告の在り方も含めて、レクサスおよびトヨタの北米事業所、さらにトヨタ日本本社で慎重な協議がなされた可能性は十分にあると思う。
自動車に限らず、ブランドを構築するために最も重要なことは、企業として社会の変化を的確に分析することだ。
「人と社会」との関係は絶えず変わり続けている。
そうした観点では、アメリカにおいては近年、自動車メーカーによる社会活動が自動車ブランドに及ぼす影響が極めて強い。
その代表的な事例が、スバルのLOVEキャンペーンであり、トヨタでも様々な社会的活動を進めている。
ポジティブな市民活動に向けて
スバルのLOVEキャンペーンは、2000年代中盤にスバル(当時:富士重工)が商品のアメリカシフトへと大きく経営の舵を切った際、アメリカ国内での顧客分析のもとに始めたプロモーション活動だ。
ところが、スバルが描いた当初計画とは別に、ユーザーどうしが自発的にスバルブランドを訴求する運動となり、さらには慈善活動などスバル車の販売とは直接結び付きのない社会活動にまで大きな広がりを見せた。
この影響によって、スバルはアメリカので新車販売が急速に伸びる結果となっている。
トヨタも、モーターショー開催期間中に女性の社会活動に対する公開意見交換会を行うなど、「人と社会」をつなぐ試みを行ってきた。
こうした動きは、たんなるブランド戦略の一環ではなく、また一般的なCSR(企業の社会的責任)とも違う印象がある。
もしも、こうした動きが負の方向に向かえば、最悪のケースでは負の連鎖を起こしてしまう危険性があるはずだ。
今回、新型ISオンライン発表延期についてレクサスが使う「現在の世界情勢に鑑み」という表現の裏には、日本人では肌感覚として理解しづらいアメリカ社会の独自性に対する配慮が感じられる。