【ボルボ流は違う】「B5」のXC60に試乗 マイルドHVを、電化イニシエーターと位置づけ

公開 : 2020.06.09 07:50  更新 : 2021.10.09 23:31

実感できる“電気の走り”

また信号ダッシュ的な加速感だが、電気モーターによる駆動感というか、エンジンがかかった後も電気のトルクがグイグイと力強く感じられる。

通常のガソリンエンジンの直線的な棒グラフに、明らかに二次曲線的な小山のカーブが、電気モーターによるプラスアルファでのせられているのだ。

モーターの存在感が希薄なドイツ系のマイルドHVとは走りが異なると筆者。
モーターの存在感が希薄なドイツ系のマイルドHVとは走りが異なると筆者。    花村英典

この辺りは、電気と内燃機関それぞれのトルクの協調と切り替えがひたすらスムーズで交響楽的ながらも、電気モーターの存在感が希薄なドイツ系の48V MHEVと、かなり対照的といえる。

XC60 B5の加速の仕方は、立ち上がりのいいスーパーチャージャーでも付いているかのような、大らかさを感じさせつつ、「電気で加速している」実感が強いのだ。

つまり、ディーゼルと同じく加速感に物足りなさはないが、振動は圧倒的に少なく、静粛性についても従来のガソリンよりずっと優れる、そこが「B5」というボルボ流MHEVの不思議なキャラクターといえる。

クリスタルガラスが「B5」でも

48Vバッテリーのような重量物がトランク床下に加わり、厳密にハンドリングや乗り心地の軽快さは僅かに譲るが、目くじらを立てるレベルではない。

何より、T8にしか採用されなかったオレフォス社製クリスタルガラスのシフトノブが、「B5」には奢られている。ボルボならではの心地よく優しい内装と、ダイナミックだが静粛性の高い動的質感のマリアージュぶりは、いわずもがなだ。

T8だけでなく「B5」にも設定されたオレフォス製クリスタルガラスのシフトノブ。
T8だけでなく「B5」にも設定されたオレフォス製クリスタルガラスのシフトノブ。    花村英典

気になる燃費については、少なからず加減速を繰り返した割に、返却時の平均燃費は9.8km/Lを記録していた。

WLTCモードで11.5km/Lというカタログ値を思えば上々だし、PHEVであるT8に対しても約1割ほどしか違わない。D4のJC08モード数値に対しても、WLTC換算なら高速道路でも引けをとらず、市街地では「B5」に軍配が上がりそうだ。

「D4」と「B5」 どっちを選ぶ?

ちなみに燃料計のすぐ上に、0.5kWh容量の48Vリチウムイオン・バッテリーの残量が示されているが、試乗しながら極端に減って残量を心配させられることはついぞなかった。

回生効率を高めるため、「B5」はPHEVと同じくコンチネンタルが供給するバイ・ワイヤ式のブレーキを採用しているが、ペダルのタッチや制動フィールに特別なコツや違和感はない。

メーター内に表示される48Vリチウムイオン・バッテリーの残量。
メーター内に表示される48Vリチウムイオン・バッテリーの残量。    花村英典

価格も戦略的で、XC60のB5インスクリプションは、従来のD4インスクリプション(759万円)とD4 Rデザイン(714万円)に挟まれた価格帯となる。

すると、よほど長距離メインでない限り、ポスト・ディーゼルの選択肢として「B5」を選ばない理由が見当たらない。それは少しづつユーザーを電化イニシエーションへ誘う、ボルボの巧みな戦略でもある。

電化具合としては国産車のストロングハイブリッドより控え目に見えても、経済性だけではない移行インセンティブを、ボルボはキチンと造り込んできた。

記事に関わった人々

  • 南陽一浩

    Kazuhiro Nanyo

    1971年生まれ。慶応義塾大学文学部卒業。ネコ・パブリッシングを経てフリーに。2001年渡仏。ランス・シャンパーニュ・アルデンヌ大学で修士号取得。2005年パリに移る。おもに自動車やファッション/旅や食/美術関連で日仏独の雑誌に寄稿。2台のルノー5と505、エグザンティア等を乗り継ぎ、2014年に帰国。愛車はC5世代のA6。AJAJ会員。

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