【戦前のBMWを組み合せたクーペ】ブリストル400 英国新ブランドの誕生 後編
公開 : 2020.06.21 16:50 更新 : 2020.12.08 11:04
当時としては画期的な水準の仕上がり
リアヒンジのフロントドアには、肘周りの空間を広くするため、スライド窓が設定された。セミバケット形状のシートは座り心地が良い。
ローラーブラインド・サンバイザーや小さなリアミラーなど、ディテールも美しい。デリケートな見た目だが、丈夫なようだ。
ジョージ・ホワイトが乗っていたJSVのブリストル400は、チューニングを受けている。コブの大きなカムと、高圧縮比によるもの。今日の一般道ではありがたい余裕のパワーを持ち、64km/hから80km/hくらいならトップギアで問題ない。
ギアボックスはクイックだが、3速で112km/hまで出せるほど比率の設定も良い。ガソリンを燃やし、活発なサウンドを鳴らす回転域で走ることもできる。
レジナルド・バードン・スミスが乗っていたKHUのブリストル400は、より洗練されフレキシブル。パワーは劣るが、ドライバーの楽しみたい気持ちが走りに反映し、路上ではJSVに遅れを取ることはない。
ブリストル400はコンパクト。広々とした快適性を求めた、その後のブリストル・カーズのモデルと比較すると、少し異なる雰囲気を持っている。
BMWが328の生産を終了してから8年後、1947年にブリストル400が完成した。だが、軽快で正確なステアリングと機敏な身のこなし、確かなロードホールディング性能を持ち合わせたクルマは、当時としては画期的な水準にあった。快適で乗り心地も良い。
高速道路が完成する10年も前の傑作
英国に高速道路が完成する10年も前に生まれた、ブリストル400。英国を縦断できる個人の移動手段として、1940年代後半から1950年代前半にかけては、最も理にかなった乗り物だったはず。
助手席やリアシートでくつろぐだけでなく、ドライバーとして今でも充分に楽しめる。ドライブトレインは、手や足、目や耳と有機的につながる感覚がある。メカっぽくアシストも付かないが、クルマが道へ導くように運転はしやすい。
運転の操作すべてで得られる感覚が、喜びへと変わる。面倒なことはない。気持ちを鎮めてくれるようだ。
現代的なクルマではない。でも心地良い変速フィーリングが、潤滑の効いた機械的な感触のステアリングや、活発で回りたがるエンジンのレスポンスと良く合う。
ステアリングホイールを握って数分も経てば、ドライバーはブリストル400へ惹き込まれてしまう。傑作として、これ以上の褒め言葉はないのではないだろうか。
ブリストル400(1947年−1950年)のスペック
価格:新車時 2374ポンド/現在 6万6000ポンド(877万円)以下
生産台数:474台
全長:4648mm
全幅:1625mm
全高:1498mm
最高速度:146km/h
0-96km/h加速:19.7秒
燃費:9.2km/L
CO2排出量:−
乾燥重量:1117kg
パワートレイン:直列6気筒1971cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:81ps/4200rpm
最大トルク:14.6kg-m/3500rpm
ギアボックス:4速マニュアル