アルファ・ロメオ4C

公開 : 2013.09.24 23:59  更新 : 2017.05.29 18:25

■どんなクルマ?

間違いなく新しい4Cは、ここ数十年のアルファ・ロメオの歴史において非常に重要なモデルといえるだろう。事実、ここ数年のアルファ・ロメオは、経営陣の迷走によって無駄な月日を過ごしてきたとも言える。しかし、BおよびCセグメントのハッチバック、ミトとジュリエッタによって復活の兆しを見せてきた。もちろん、8Cコンペティツィオーネもアルファ・ロメオ復活の助けにはなった。しかし、それはあくまで少量生産のモデルでしかない。アルファ・ロメオが本当にその価値を認めるユーザーにクルマを届けていた時期からもう30年が過ぎようとしているのだ。そういった意味においても、4Cは本当のアルファ・ロメオの真の価値を届けるという意味において、重要な役割を持つモデルなのである。

あまり強調されてはいないが、その2シーター・フィクスドヘッド・クーペのシャシーはリジッドなカーボンファイバー製で、その重さは僅かに65kgしかない。しかも、フェザー級の4Cは、22kgも軽量化されたオール・アルミ製のダイレクト・インジェクションの4気筒1750ターボをその心臓に備える。その結果、トータルのボディ・ウエイトは925kgに過ぎないのだ。これは、ロータスエキシージとほぼ同じウエイトだ。

エンジンは240bhp/6000rpm、35.7kg-m /2100-4000rpmのパワー、トルクを持つ。1トンあたり259bhpという換算だ。これは、価格が2倍以上するようなスーパーカーと比較しても遜色のない値だ。

パフォーマンスは、0-100km/h加速が4.5秒。トップ・スピードは250km/hに達する値をマークする一方で、その燃費も14.7km/ℓと非常の効率的な値を返す。ライバルと目されるポルシェケイマンよりも若干低い価格設定だが、ケイマンより速く、加速も良く、しかも燃費が良い.

4Cのカーボン・タブは、フェラーリマクラーレンと同じ手法で製作されるが、£45,000(712万円)という価格に収めるために、今年の終わりまでに3,500という数を製作する予定だという。ヨーロッパ市場向けに1年に製造される4Cは1,000台。そのうち200台が英国市場向けに振り分けられる。

また、ホワイトにペイントされたラウンチ・エディションは500台が生産されるが、こちらは既にすべてのオーナーが決定している。従って、通常の2014年モデルからが英国での正式販売となる。そのため、4Cはしばし直ぐに購入することは不可能だが、その仕様は既に確定している。

ミドシップに横置きされるエンジンは非常にコンパクトで、重量はリア・ホイールに60%が乗る。ギアボックスはパドル・シフターを持つ6速のデュアル・クラッチ。ブレーキは4輪ディスクでブレンボ製だ。そのディスクは初期の効きを改善させるためにスペシャル・コートが施されている。

ボディはCd値0.35という値で、トリノに拠点を置くセントロ・スティーレの風洞でテストが繰り返された結果、非常に優れたダウンフォースとドラッグを持つ。

ステアリングはノン・アシスト。ギア比は非常にクイックで、90%のコーナーをステアリングから手を離すことなく抜けることができるとコメントされている。

最初にそのスタイリングを見た時に感じることは、”小さい” ということだろうか。そのサイズはエキシージとほぼ同じだ。テールのスタイリングやエア・スクープには、フェラーリF12を感じさせるものがある。また、ランチア・ストラトスと思い起こさせる造形が、サイド・ウインドー・シェイプや、半円型のフロント・ウインドー、そしてスクリーン・ピラーにはある。更に、8Cコネペティツィオーネの影響ももちろん感じられる。

エンジンを掛け、一般道に4Cのノーズを向ける。合法的とは思えないほどのエグゾースト・サウンドに見舞われ、ギアを2速に入れる寸前には劇的なウエストゲートのバルブ音が聞こえる。そのパワーは、現行の1.6ℓターボのラリー・マシンを思い起こさせるほど非常に強力だ。

大きな驚きがキャビンの中にもある。エキシージほど邪魔ではないが、カーボンファイバー製のシルは高く幅広い。足を伸ばし、アルカンタラ製のセミ・レース・バケット・シートに身を沈める。先ず最初の驚くのが、剥き出しのカーボンファイバーの多さだ。そして2つめがそのシンプルさ。至るところでつや消しのブラックのカーボンファイバーがそのまま使われている。純粋にドライビングを楽しみたいというオーナーのためには、エアコンとオーディオを装備しないという選択も可能だ。ドアは昔のポルシェ911を思わせるシンプルな本革のプル・ハンドルで、フロアも耐久性にはすぐれるが、決して豪華とはいえないもの。確かに期待していたような豪華な装備はそこにはないが、これも軽量化を最優先させたための結果だ。財布のようなスロットがダッシュボード下に設置され、カップホルダーも用意されるが、基本的にはシンプルで、とりわけ便利なものは装備されていないのだ。

TFTスクリーンは、大きな回転式ダイヤルによって、速度、ギア・ポジション、温度、残燃料、日付などといった重要な情報が表示されるもの。そのドライビング・モードを”レース” モードにすれば、ディスプレイのカラーが変化すると共に、スロットル・レスポンス、ギアチェンジ・タイミング、シャシー・スタビリティが変化する。

■どんな感じ?

エンジンを始動するための儀式はシンプルだ。2つしかないペダルのうち、ブレーキ・ペダルに足を載せていれば良いだけだ。そしてキーを捻れば良い。セレモニーもなく、ダッシュボードからのメッセージもなく、そしてブリッピングすることもなくエンジンは目覚める。そして直ぐに典型的な4気筒エンジンのアイドリングに収まる。ある意味ではそれは非常に衝撃的なことかもしれない。

防音処理はほとんどされていない。バルブ・ギアの立てるサウンドが、ドライバーの背後から容赦なく聞こえてくる。しかし、もちろん不快なものではない。

このエンジンは、リッターあたりの馬力については、最近のレース・エンジンすら上回るパワーの持ち主である。エンジンをふかすと、2連ウェーバーを装着したエンジンかのような素晴らしい反応を示す。そのサウンドは心地よいものだ。

シンプルなコンソールに手を伸ばし、”1″ を選択する。それより上のギアを選択する場合は、パドルで操作することとなる。もちろん、セルフ・シフト・モードであるA/Mモードも用意はされているが。

小さなスロットル・ペダルを踏むと、エリーゼやアトムのように4Cはあっけなくスタートする。すると直ぐに4Cの軽量なボディの恩恵がわかる。1速でカバーできる範囲は非常に短い。しかもノイジーだ。しかし、その加速は力強い。あっという間に6500rpmのレブ・リミットに達してしまうため、正確なパドル操作でシフト・アップして上げる必要がある。

そこからシフト・アップしていくのだが、非常に速く滑らかである。ダイナミック・モードとレース・モードでは、30%ほどそのタイミングは速くなる。そのクラッチ・システムが回転と速度をあわせるメカニズムは極めて上手い。

パフォーマンスと柔軟性はこのパワートレインの得意とするところだ。サウンドは騒がしく、ウエストゲートの叫び声が、シフト・チェンジするたびに聞こえてくる。しかし、クルマの外から効くサウンドは素晴らしい。コクピットの中で効くサウンドも、外で聞くほどではないが、常に楽しませてくれるものだ。

そのパワーをフルに使えば、充分に速いクルマだ。とりわけ、100km/hから160km/hまでのペースはより大きな排気量を持つモデルと比べても遜色がない。

エンジンはトップ・エンドの伸びは期待するほどでもなく、5500rpmを越えると鈍くなる。しかし、5500rpmを目安にシフトすれば、ダイナミック・モードであろうとレース・モードであろうと、一般道でもサーキットでもファステストなクルマであることは間違いない。

クルマ自体がコンパクトなゆえに、小さなスロットル・ワークにも敏感に反応してくれるので、そのドライビングはとりわけ面白い。スロー・ベンドからの立ち上がりでも2000rpmを越えたあたりから力強い加速を示す。そして、そのサウンドは常に心地よい。

英国のような環境では、4Cは少しオーバーギアかもしれない。トップ・ギアでは1000rpmにつき48km/hというレシオだ。しかし、低速から溢れるトルクは、それをカバーするだけのものがある。このギアレシオを何故アルファ・ロメオが選んだかは直ぐに理解できるはずだ。

ギアボックスにDCTのみを選んだにはわけがある。また、エンジンが4気筒ターボで、クリーミーはV6を選ばなかったかもだ。それは、1750エンジンが、その軽量なボディによって、充分なパフォーマンスを得られるからである。更に、現時点ではユーザーの90%がDCTを選ぶという事実もある。少量しか生産されることのないマニュアル・ギアボックスのために大きな開発費を注ぎ込む必要は感じられないのである。

アルファ・ロメオがバロッコのテスト・トラックで4Cの試乗を行ったのには、その軽量で、広いトレッド、固いシャシー、低い重心、4輪独立のサスペンションといった4Cのロードホールディングと乗り心地のクオリティに自信があったからに他ならない。

限界付近ではほんの少しのアンダーステアを示すセッティングだ。オーバーステアに持ち込むにはそれなりの努力がいる。しかし、繰り返し試みることによって、テール・スライドを上手く発生させコントロールすることもできた。

その乗り心地はロータスのような落ち着いたものだった。確かに固いが、驚くほどフラットで、よくダンピングの効いたもの。その快適さは悪路で有名な英国の道にも対応できると確信した。

また4Cはグリップを得るために巨大なタイヤを必要としないクルマでもあった。われわれのテスト車両もオプションのタイヤ・パックを履いていたが、それでもフロント205/40ZR18、リア235/35ZR19という控えめな数値だ(標準はフロントが17インチ、リアが18インチ)。

その軽量なボディがゆえにブレンボのディスク・ブレーキは、100km/hの速度から停止させるために35mしか必要としないのも特筆すべきところだろう。

ノン・アシストのステアリングは、慣れるまでには若干の時間を要するが、それ自体のフィーリングは4Cの長所だ。確かにノン・アシストなので、停止時にステアリングを切る時には大きな力を必要とするが、パーキング・スピード以上になればすべてが良い。コーナリング・スピードが上がってもパワー・ステアリングのように操舵力が重くなったりはしないが、路面の状況は非常によく伝えてくれる。特に160km/h未満の一般的なスピードでは素晴らしく安定している。かつて、ポルシェ911もアシストのないステアリングを採用しており、その素晴らしいフィーリングを誇っていたことを思い起こさせた。

■「買い」か?

このアルファ・ロメオ4Cは、優れたドライバーズ・カーだ。しかし、万人向けのモデルでもない。2、3の欠陥は確かにある。また、何人かはポルシェ・ケイマンの方が熟成され完成されたクルマであると答えるだろう。毎朝、ビジネスに使うのであれば、ケイマンの方が向いているかもしれない。しかし、1年で200人しかいない英国人のオーナーは、そういった評価を気にしないだろう。彼らはケイマンをライバルとは考えないからだ。彼らはアルファ・ロメオ4Cのオーナーであることを望んでいるからだ。

アルファ・ロメオ4C

価格 £45,000(712万円)
最高速度 250km/h
0-96km/h加速 4.5秒
燃費 14.7km/ℓ
CO2排出量 157g/km
乾燥重量 895kg
エンジン 直列4気筒1742ccターボ
最高出力 240bhp/6000rpm
最大トルク 35.7kg-m /2100-4000rpm
ギアボックス 6速デュアル・クラッチ

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