【フレンドリーで特別なスーパーカー】アウディR8 RWDへ試乗 540psの後輪駆動 前編
公開 : 2020.06.15 10:20
アウディといえば前輪駆動か四輪駆動という概念を覆す、同社初の後輪駆動の量産モデルがR8 RWD。エンジンは、近年では珍しい自然吸気のV型10気筒です。R8の中で最も魅力的なモデルだと、英国編集部は評価します。
アウディとして特別な後輪駆動
アウディR8 RWDが英国にやって来た。フロントのドライブシャフトを持たないR8は、かなり特別なモデルだといえる。
アウディといえば、四輪駆動システム、クワトロによる安定性の高いスポーツモデルのイメージで牽引するブランド。これまでのモデルからすると、後輪駆動は造反的な選択だといえる。
確かにアウディR8には、LMSという後輪駆動モデルが以前から存在している。しかしアウディ・スポーツの手による、サーキット走行前提の特別モデル。アウディ自らが、量産の後輪駆動モデルを公道で走らせることは今までなかった。
2017年にも、アウディはR8 RWSという限定仕様をリリースしたことがあった。RWSは、リア・ホイール・シリーズの略。生産台数は限られており、それ以上の台数をアウディが販売することはないだろうと考えていた。
もしRWSが標準の四輪駆動のR8より運転が楽しく、満足度の高いものだったら、クワトロを軸とするマーケティング手法自体が危うくなる可能性もあるからだ。その心配は理解できる。
果たして実際に、RWSは四輪駆動のR8よりより楽しく、充実したドライビング体験が得られた。しかし、標準のR8とは驚くほど異なる体験で、クルマのキャラクター自体が巧みに作り変えられたようにすら思えた。
バーゲンプライスと呼べるR8 RWD
その仕上がりを見たアウディは、よりパワフルで高速な、四輪駆動のR8との競合はないと判断したのだろう。R8 RWSは呼び名を変え、量産モデルの8R RWDとしてわれわれのもとにやって来た。素晴らしい判断だ。
そしてもう1つ、R8 RWDには特別な意味がある。2020年の今、323km/hの最高速度を誇り、自然吸気V10エンジンをミドシップするスーパーカーを、11万5000ポンド(1518万円)程度で売っているメーカーはアウディだけ。
この価格を英国で比べれば、最新992型のエントリーグレード、ポルシェ911カレラSと同程度ということになる。オプションを追加すれば、価格は逆転すらしてしまう。R8はバーゲンプライスと呼んでいいだろう。
2代目へと代替わりしたR8も、2020年で5年目。すでにフェイスリフトを受けており、アグレッシブなルックスを得たが、どこか昆虫のようにも見える。最先端モデルらしい雰囲気は放っている。
同時に控えめなボディ色に塗られたR8は、日常の交通にも難なく溶け込むことができる。ルックスも含めて、とても順応性の高いスーパーカーであることにも変わりはない。
アウディはコンパクト・ハッチバックのA1から、大型のSUVまで幅広いモデルを製造している。そうだとしても、アウディR8は生粋のサラブレッドだ。