【ガソリン車に並ぶ選択肢】フォルクスワーゲンID.3へ試乗 58kWhで420km 後編
公開 : 2020.06.17 15:20 更新 : 2021.02.02 18:46
遂に巨人、フォルクスワーゲンから発売となった、ファミリー向けの純EVハッチバック。運転しやすく乗り心地も良好。充電設備次第では、主流の選択肢となる総合力を備えています。英国編集部がドイツの一般道で評価しました。
瞬間的に解き放たれるモーターのトルク
純EVのフォルクスワーゲンID.3は、アクセルペダルを軽く踏むだけで、力強い加速が得られる。とてもシャープな反応で、1720kgより車重は軽く感じられるほど。203psの数字以上に、強力な発進加速と中間加速を披露する。
ゴルフGTIと同等の加速性能だというが、0-100km/h加速の時間は未公表。最高速度は160km/hに制限されている。
瞬間的に解き放たれる電気モーターの最大トルクが、動的性能の個性を形成している。固定レシオのトランスミッションが組み合わさり、加速感は極めてリニア。高速道路の速度域まで、加速度は衰えない。
この速度を超えた辺りから、タイヤの転がり抵抗と空気抵抗が増していく。電気自動車にとっては、挑戦的な領域だといえる。
ドライブ・モードでアクセルペダルを放すと、抵抗を感じることなく惰性で進む。従来のクルマでは届かなかったような距離をスルスルと進む。さらにスイッチレバーを回しバッテリー・モードを選ぶと、回生ブレーキが効き、運動エネルギーを電気エネルギーとして蓄えられる。
回生ブレーキは力強く、ブレーキペダルを踏む必要はほとんどない。ブレーキペダルを踏んだ感触は一貫性に優れ、踏み込み量の調整はしやすく、不安感もない。
運転するほどに、ID.3の洗練度の高さが見えてくる。駆動系統からの音は、ほぼない。タイヤノイズや風切り音が相対的に目立ってしまうものの、どちらも充分に小さい。突出した上質感が味わえる。
最新の8代目ゴルフより運転しやすい
ID.3が土台とする純EV用プラットフォーム、MEBの強みに、フロント周りの自由度がある。モーターがリアに搭載され、最小回転直径10.2mという小回りを実現している。
ダイナミクス特性にも影響は大きい。高い次元での直感的な操縦性を確保しつつ、扱いやすさも備える。エコ、コンフォート、スポーツ、インディビジュアルのドライブ・モードすべてで同様。近似する価格帯の純EVの中では、ベストといえるだろう。
最新のゴルフより、ID.3は運転がしやすい。狭い道でもキビキビと活発に走り、小さな駐車スペースにもするりと回り込んで停められる。
高速道路でも予想通り、まとまりのあるマナーに仕上がっている。リアモーターの影響で、押し出されるような感覚があり、走行時のバランスがとても高い。
バッテリーは平坦なフロアに収められている。重心が内燃エンジンを積むハッチバックより、はるかに低いことも有利。車重は1700kgを超えるものの、しっかりとした減衰力を持つ足回りが、ボディロールを抑え込んでいる。
後輪へ伝わる太いトルクが鋭い瞬発力を与え、トラクションも素晴らしい。ステアリングフィールを崩すことなく、タイトコーナーから勢いよく加速できる。
ステアリングは電動アシストの可変レシオで、低速域での操舵感は軽く扱いやすい。速度の上昇に合わせて重みも適度に増していき、高速域ではどっしりした手応えになる。
電動パワーステアリングの中には、よりダイレクト感があり、機敏な特性を持つものもある。ID.3はセルフ・センタリングが強く、フィードバックが豊かだ。