【純EVの小さな高級車】DS 3クロスバック E-テンスへ試乗 航続距離331km

公開 : 2020.06.18 10:20  更新 : 2022.04.23 11:59

運転しやすいものの気になる乗り心地

反面、DS 3クロスバックはとても運転しやすい。動的性能も不満はない。同価格帯のEVをリードするほどの性能ではないものの、高速道路や郊外の道での追い越しを躊躇しない力強さがある。

航続距離は、カタログ値ではさほど目立った数字ではないが、充分評価できる。高速道路を走行しても、満充電で240km以上は走れる様子。速度域の低い街なかや郊外の道でなら、290kmから300kmくらい先は目指せるだろう。

DS 3クロスバック Eテンス ウルトラ・プレステージ(英国仕様)
DS 3クロスバック Eテンス ウルトラ・プレステージ(英国仕様)

ドライブ・モードはいくつかが用意され、スポーツ・モードが最もアクセルペダルの反応が良くなる。エネルギー回生機能の効きの強さは、DとBの2段階のみだ。

ほかのEVの方が、エネルギーの回収を知的に、より効率的に行えている。DS 3もライバルと同等の回生が行えれば、50kWhのバッテリー容量からより長い航続距離を得られるはず。

DS 3クロスバックのシャシー設定は、しなやかな快適性を残しつつ、ボディの動きを最小限に抑えた正確な操縦性を持たせようというもの。英国の道とは、少し相性が良くないようだった。

アンチロールバーは硬めで、コーナリング時のロールを防いでくれ、ハンドリングの精度も悪くない。そのかわり、ストローク量が長く穏やかな減衰力のサスペンションは、横方向のしなやかさに欠ける。わずかな路面の凹凸でも、姿勢制御が乱れてしまう。

コーナリング中の路面の隆起部分などでは、強めの振動も届いてしまう。路面が荒れてくると、ロードノイズも小さくない。

豊かな個性や多様性が認められる純EV

DS 3クロスバック E-テンスは、実用性で最も優れるコンパクトEVだとはいえない。多くの人を惹きつけるタイプのクルマでもないだろう。

試乗車より5000ポンド(66万円)安い価格から選べるが、コストバリューでの訴求力も強いものではないだろう。英国政府からの補助金が適用されたとしても。

DS 3クロスバック Eテンス ウルトラ・プレステージ(英国仕様)
DS 3クロスバック Eテンス ウルトラ・プレステージ(英国仕様)

これからの成長が見込まれているEV市場の中で、すでにもっと革新的なクルマはある。筆者の感覚では、内容的にも見た目でも、より惹かれるクルマが存在している。

かといって、魅力がないわけではない。小さな高級車として内容には優れるし、走りも悪くない。プレミアム・ブランドのモデルと比べても、コンパクトカーとして、実用性や扱いやすさの要件は満たしている。

三角形が基調のDS 3クロスバックのデザインが好きで、航続距離などEVとしての条件に納得できるのなら、選んでも後悔はしないはず。まだまだ成長期にある、純EV。モデルごとの豊かな個性や多様性が、認められる市場でもあるはずだ。

DS 3クロスバック Eテンス ウルトラ・プレステージ(英国仕様)のスペック

価格:3万5990ポンド(475万円/英国補助金適用後)
全長:4118mm
全幅:1791mm
全高:1534mm
最高速度:149km/h
0-100km/h加速:8.7秒
航続距離:307-331km(WLTP)
CO2排出量:0g/km
乾燥重量:1523kg
パワートレイン:永久磁石同期電気モーター
バッテリー:50kWh
最高出力:135ps
最大トルク:26.4kg-m
ギアボックス:シングルスピード・オートマティック

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