【グループCカー並みの速さ】ポルシェ718ケイマンGT4 クラブスポーツへ試乗
公開 : 2020.06.26 10:20
アマチュア・ドライバーの運転が前提
公道用のケイマンGT4と同じくらい、ケイマンGT4クラブスポーツは運転がしやすい。レースという環境でいえば。
コックピットの眺めは見慣れないし、スリックタイヤを履いたレーシングカーに乗っている、ということを理解すると、重圧感もある。でも基本的にGT4マシンは、アマチュア・ドライバーが運転する前提で作られている。
ロードカーに搭載される電子デバイスは、すべて残されている。経験が浅い人へも、間口は開かれている。
ちなみに、ケイマンGT4クラブスポーツと同じ金額で、ポルシェ911カップカーが買える。しかし両車の目指すところは異なる。
カップカーは、ABSやトラクションとスタビリティコントロールが付かない。定期的な管理が必要で、限界領域での操縦性を高めたスプリントレース用タイヤを履く。GT4カテゴリーとは異なる、より上級のアプローチが必要となる。
GT4クラブスポーツは、基本的な特性がロードカーと極めて近い。ドライバーに求められるのは、自身の技術を高め広げること。公道用モデルに求められるものとは、別次元の水準にまで。
乗り心地は意外にも悪くない。足元にも頭上にも充分な空間があり、ステアリングコラムの調整方法は、乗り慣れたクルマと同じ。エンジンが目覚めると、いつものサウンドが聞こえてくる。
コース上へクルマを進める。ドライバーが試されるフィールドだ。
タイヤは温度が上がらない限り、ちゃんと機能しない。コースインした直後から、ハードな運転で温める必要がある。ここで助けてくれるのが、電子デバイスだ。
ブレーキングとコーナリングを融合させる
アウトラップのストレートで、右足でアクセルペダルを踏んだまま、左足でブレーキペダルを踏む。ブレーキの熱で、タイヤを加熱する。
熱が入れば、準備完了。ストレートは爽快なだけではない。ブレーキに慣れる必要のある、奥深い領域でもある。
レースカー基準でいえば、さほどダウンフォースの大きくないケイマンGT4クラブスポーツ。減速と同時に少なくなるダウンフォースに合わせて、ブレーキペダルを踏む力を調整する心配は、さほどいらない。
普段ブレーキを踏むべきだと感じるポイントを過ぎて、3秒ほど我慢してからペダルを蹴飛ばす。その操作は難しい。ABSの介入は少なく、甲高い悲鳴が響く。
減速したら、コーナリングスピード。非現実的な速度に思えるが、息を呑んでぐっと堪える。ブレーキングとコーナリングを身につけ、融合させ、自分のものにするまでは、速くは走れない。それから、アクセルペダルを蹴飛ばすタイミングだ。
ラップタイムを縮める鍵は、コーナー頂点、エイペックスへの侵入。適切なタイミングでブレーキペダルを放し、負荷を解き、コーナリングフォースを構築する。タイヤのグリップ力を、縦方向にも横方向にも、可能な限り限界へ近づける。
シルバーストーンのような高速サーキットでは、リズムの確立が必要。クルマが飛ぶように走り始めたら、のめり込み、ピットへは戻りたくなくなるだろう。
オフスロットル・オーバーステアの修正に時間がかかってしまった。でも、手を焼いたのは1つのコーナーのみ。さらに100psくらい上乗せしても、クルマは許容できそうだ。