【詳細データテスト】アウディA8 ハイブリッドの制御、みごと 乗り心地はクラス水準に届かず
公開 : 2020.06.28 08:50 更新 : 2020.06.29 02:36
操舵/快適性 ★★★★★★☆☆☆☆
もしもシームレスなパフォーマンスが優れたサルーンに期待される要素なら、根本的な概念そのものの浮沈を決めるのは乗り心地だ。
悲しいかな、45扁平タイヤと精巧なエアスプリングをもってしても、このクルマが路面の凹凸や波打ちを思った以上に拾ってしまうのを隠しきれてはいない。
ボディの上下動はうまく処理してくれる。問題はセカンダリーライド、つまりは細かい振動や突き上げだ。過敏で、ストラットが唐突な負荷を吸収してほしいところでは強く叩かれるような衝撃が出てしまう。
英国の公道は常に、こうした部分を試してくる。このA8のサスペンションが140kgほどあるバッテリーの重量に対処するべく根本的に改修されていても、おおむねスムースなドイツのアウトバーン向けのセッティングだとしても、結果は残念なものだったというしかない。
それ以外の部分は悪くない。速度感応式でギア比は速くないステアリングは軽いが十分に正確で、このクルマの走りにフィットしている。
ハンドリングのバランスは、フルタイム4WDでありながら間違いなくフロント優勢。それでも、ダイナミックモードでそれなりに飛ばしても、コントロールを失う心配をすることなく操作できる。
ストロークの長いサスペンションは、上下と横方向のコントロールが同時に要求されると瞬間的に振動を発生させる傾向がある。たとえば、コーナリング中に凹凸があった場合などがそうだ。それでも、大柄なアルミボディは、頼もしいまでに動きを抑えられている。
ただし、総じてA8には、Sクラスのように走行中の外乱を遮断したエレガントさも、7シリーズを脅かすような走りの魅力もありはしない。
エンジニアリング的には、世界トップレベルの高級サルーンになれる要素が十分ある。にもかかわらず、アウディはこのA8をどのような立ち位置にしたいのか、それを決めあぐねているように、われわれには思えてならない。