【ディーゼル人気、過去のもの?】あっというまにプラグインハイブリッドが欧州で人気 なぜ?

公開 : 2020.06.26 05:50  更新 : 2021.10.09 23:05

なぜいまPHEVに勢いがあるのか?

今年の第1四半期のヨーロッパ市場におけるディーゼル車のシェアは29.9%と、前年同期から3.3ポイント縮小している。

しかし自動車メーカーやヨーロッパ各国の政府は、欧州委員会からCO2排出量削減も課せられているため、消費者がCO2排出量が多いガソリン車に流れても困る。

そこで各メーカーは古いディーゼル車からEVやPHEVなどへの買い換えにインセンティブを用意。その流れで多くの国が2016年頃からEVとPHEVの購入補助金制度を導入。

しかし、北欧やオランダなど一部の国を除いて、これら電動車、特にEVの普及はなかなか進まなかった。

だが昨年あたりから比較的手ごろな価格のEVの選択肢が市場に揃い始め、各国で購入補助金や優遇税制がさらに充実したことから、EVの販売が伸び始める。

同様に、各メーカーのラインナップが充実した感のあるPHEVの販売も急激に伸び始めたのだ。

PHEVの販売増は、ヨーロッパ最大の自動車市場であるドイツの政策が大きな要因となっている。

ドイツでは昨年11月、2016年6月から実施していたPHEVの購入補助金が増額され、車両価格が4万ユーロ以下のモデルは6750ユーロ(政府4500ユーロ+メーカー2250ユーロ)、6万5000ユーロ以下のモデルは6750ユーロ(政府3750ユーロ+メーカー2250ユーロ)となった。

さらに今年1月からは、カンパニーカーに課せられる走行税(毎月車両価格の1%、または走行距離に応じて算出された額が、使用者の所得に上乗せされて課税される)が0.5%に減額された。

これらの施策が、ドイツにおいてPHEVのカンパニーカー導入を大きく後押しした。

EVくすぶる 航続距離/インフラ問題

今年1月には前年同月の307.3%増の8639台、2月は同279.4%増の8354台、3月は同207.9%増の9426台、5月は同106.6%増の6755台(4月はロックダウンの影響によりデータ未集計)と、販売が激増しているのだ。

しかし、これら購入補助金や優遇税制はEVにもあり、むしろ条件的にはより有利であるにもかかわらず、PHEVの方が大きく伸びているのは、やはり航続距離と充電インフラの問題だ。

EVの航続距離が以前より伸び、充電インフラが以前より充実してきたのは事実だが、それでもEVを問題無く使用できる環境にいる消費者は、ヨーロッパの主要国といえど、まだ限られているのである。

燃料さえ入れれば、リチウムイオンバッテリーがたとえ空の状態でも走行できるPHEVは、年間走行距離が日本より遥かに多いヨーロッパのドライバーには、より魅力的に映るはず。

購入補助金や優遇税制などの経済的メリットはもちろん購入の後押しになっているが、PHEVは今やディーゼル車に代わるとても現実的な選択肢なのである。

今後PHEVは、2025年にノルウェー、2030年にドイツとオランダ、スウェーデン、アイルランド、2035年にイギリス、2040年にスペインとフランスと、各国で予定されているコンベンショナルな内燃エンジン(ICE)車の販売禁止に向けて、当面はシェアが拡大し続けるだろう。

ヨーロッパの大都市の多くが、2030年までにICE車の乗り入れを禁止する意向であることも、PHEVには有利に働くはずだ。

記事に関わった人々

  • 竹花寿実

    Toshimi Takehana

    1973年生まれ。自動車専門メディアの編集者やライターを経て、2010年春に渡独。現地でドイツ車とドイツの自動車社会を中心に取材、日本/中国/ドイツ語圏のメディアに寄稿。2018年夏に帰国、現在は東京を拠点に新型車や自動車業界、モビリティ全般について独自の視点で発信中。海外モーターショーの取材経験も豊富な国際派モータージャーナリスト。

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