【幸福で満たされる】ベントレー・コンチネンタルGT V8コンバーチブルへ試乗
公開 : 2020.06.27 10:20
扱いやすさとパフォーマンスを兼ね備えたV8
クーペからルーフを切り落とすために、車体は補強され、車重は170kg増えている。2.3tもあるクルマだから、割合的な増加は大きくはない。コンチネンタルのパワートレインは、まったく意に介さず、ボディを進める。
一方で走行時の洗練性は、わずかだが明確に影響を受けている。それに気づくか、気にしないかは、ラグジュアリーモデルをどう楽しみたいかで変わる。
金色のリングで縁取られた、トランスミッション・トンネル上のスターターボタンを押す。遠くから、V8エンジンの艷やかなサウンドが響いてくる。ルーフがないぶん、エンジンが放つ脈動を、ドライバーは直接的に感じ取ることができる。
同じボタンの外周リングを回し、ドライブモードを選ぶ。デュアルクラッチATは、わずかにぎこちない。変速の振る舞い自体は良いのだが。
パワートレインは、常にドライバーを満たしてくれる。ラグジュアリーなグランドツアラーに求める、扱いやすさと秀逸のパフォーマンスを兼ね備えている。W12気筒では得られない、鋭いレスポンスとサウンド、気持ち良い吹け上がりも楽しめる。
ハンドリングは、オプションのベントレー・ダイナミック・ライドを装備していれば、コンフォートからスポーツ・モードへ切り替えると、コーナリング時の明確な違いを体験できる。試乗車にも装備されていた。
スポーツ・モードでは、常に80%以上のトルクがリアタイヤへ伝わるように制御される。サスペンションもスポーティさを増す。
走りのベストバランスはベントレー・モード
ステアリングの操舵感は、重すぎず、軽めと呼べる。期待通り、フロントタイヤへ伝わるトルク感は排除しつつ、手のひらへの路面の情報は残されている。
車重のあるラグジュアリーなグランドツアラーだけあって、グリップの限界値は手前にあってもおかしくない。それでも、コンパクトなスポーツサルーンのように、自由度とバランスを保持し、大きなボディの向きを変えていける。
タイトなコーナーを攻めても、クルマの限界値がどこにあるのか、明確には見えてこない。まるで何か特別な力が働いているかのようだ。しかも、かなりの高い次元にある。
スポーツ・モードでは、路面の起伏を通過するとシャシーへストレスが加わり、不規則な振動がわずかに感取される。ベントレー・モードを選べば、姿勢制御とハンドリング、乗り心地の最良バランスが得られる。
コンフォート・モードを選んでも、クーペと同等の揺るぎないソリッド感と上質な乗り心地は得られない。ソフトトップは高速域でも見事に風切り音を遮るが、16万ポンド(2112万円)以上のラグジュアリーGTに期待するほど、外界との隔離感は高くはない。
いずれも、グランドツアラーに対する価値観で受け止め方は変わると思う。ルーフを開いて、特別なクルマとの時間を楽しみたいと考えるオーナーなら、クーペとの些細な違いは気にならないはず。