【現行BMW製モデルのベスト】BMW M2 CSへ試乗 F87型のグランドフィナーレ
公開 : 2020.06.28 10:20 更新 : 2020.06.28 18:14
ザクセンリンク・サーキットで実力を解く
筆者がM2 CSのドライブを許されたのは、サーキットのみ。しかし、M2 CSの動的性能を解き放つには、サーキットが丁度いい。場所はドイツ中東部のザクセンリンクだ。
ここは、バイクレース、モトGPのドイツ戦が開かれるコースとして有名。朝に激しい雨が降り、チャレンジ度合いは増している。クルマを思う存分振り回せる。
長いストレートと緩いコーナーで結ばれた優しいセクションもあれば、急な減速からのS字コーナーと、180度以上向きを変えるループもある。全開で抜けるダウンヒルの先には、高速コーナーが待っている。
BMWは、M2 CSのオーナーの多くがサーキット走行を楽しむと期待している。この場所は、試乗評価にはうってつけといえそうだ。
車内に乗り込むと、コクピットも手直しされていることがわかる。全体的にはM2コンペティションと同じデザインだが、アームレストが省かれた、カーボンファイバー製のセンターコンソールが付いている。
フロントはM4 CSと同じスポーツシートで、アルカンターラ仕上げ。もちろん、贅沢な雰囲気を漂わせているわけではない。かといって、レーシングマシンほどのスパルタンさもない。リアシートもちゃんと残っている。
運転席の位置調整は手動。着座位置は低く、素晴らしい運転姿勢が取れる。ステアリングホイールはMスポーツのもので、アルカンターラ巻き。かなり肉厚なリムだが、コブが付いていて掴みやすい。
信じられないほど柔軟で扱いやすい
エンジンをスタートさせる。明確なタービンノイズが、ドライバーを挑発する。こんなサウンドに調律するのは、BMWくらいだろう。M2 CSだから許されるとも思える。
低回転域から中回転域まで、スムーズで筋肉質。レブリミットまで切れよく吹け上がり、レスポンスも鋭い。迅速な中間加速を披露する、サーキット走行に適した動的性能を獲得している。Mブランドとして差別化を強め、確固とした個性を放つ。
追加された40psは、すぐには体感できない。最高出力の発生回転域が1000rpm上乗せになっていて、M2 CSは従来以上に熱く走らせなければならない。エンジンは極めてスムーズで、回転上昇とともに聴覚的な満足感も高まるから、むしろ積極的に熱くなれる。
BMWによれば、0-100km/h加速は4.0秒。M2コンペティションより0.2秒速く、ケイマンGT4より0.4秒も速い。Mドライバーズ・パッケージが標準装備で、最高速度のリミッターは280km/hまで高められている。
超高速域まで到達するのに、必死になる必要はない。最大トルクは2350rpmから5500rpmまで湧き出るから、信じられないほど柔軟で、とても扱いやすい。
回転数を引っ張らずにシフトアップしても力強さは充分で、低速コーナーの脱出加速に不足はない。シフトパドルはステアリングホイール側に取り付けられ、シフトアップの反応は素早く、シフトダウン時はレブマッチ機能でスムーズ。
ただしマニュアル車的な、操る実体感は乏しい。M2 CSの価値は、ドライバーとマシンとの強い一体感にある。例えラップタイムが数秒遅くなったとしても、6速MTを検討するべきだと思う。
この続きは後編にて。