【華やかに着飾ったカブリオレ】VWカルマン・ギアとルノー・フロリード 後編

公開 : 2020.07.11 16:50  更新 : 2022.08.08 07:39

同時期に誕生した、VWカルマン・ギアとルノー・フロリードは、カブリオレとして同じ理想を描いたクルマ。カロッツェリアが生み出した美しいボディを持ちつつ、知名度は大きく異る2台を、英国編集部が試乗しました。

見た目によらず非力なエンジン

text:Chris Chilton(クリス・チルトン)
photo:Will Williams(ウィル・ウイリアムズ)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
ルノー・フロリードのフロントガラスは立ち気味で、シートは肉厚で快適。スポーツカーというより、グランドツアラーっぽい。だが社外品のステンレス製のエグゾーストに交換され、かなり刺激的なサウンドが響く。クルージングに求める以上のボリュームだ。

シフトノブは長く、変速フィールはトラックのもののように粘りがある。4速MTはこのモデルでは標準装備になっていたが、1速にシンクロはない。変速操作自体は軽く、わずかな力でシフトアップできる。

フォルクスワーゲン・カルマン・ギア/ルノー・フロリードS
フォルクスワーゲン・カルマン・ギア/ルノー・フロリードS

リアタイヤの間に収まるのは、956ccの4気筒エンジン。初期のフロリードは、ドーフィン譲りの845ccエンジンを積んでいた。最高出力は37ps。バルクヘッドに設置されたラジエーターへは、ボディ下面のくぼみから直接風を当てる、機能的な設計が施してある。

1962年になるとフロリードにはSが付き、5ベアリング・クランクとオーバーヘッド・バルブを備えるシエラ・エンジンへと置き換えられる。ルノー8に搭載されたユニットで、最高出力は45psへ高まった。

パワーアップしたとはいえ、他のモデルも増強が進む中では、目立った性能ではなかった。エンジンは回りたがりでレスポンシブ。驚くほどスムーズだ。排気量の割にボディは大きいから、現代の交通に付いていくには努力がいる。

オーナーのトニー・ナピンはこのフロリードを気に入っているが、もう少しパワーが欲しいなら、1964年以降の1108cc版を探すこともできる。それでも55psだったから、スポーツカーと呼べる動的性能は得られないのだが。

オープンでゆったりと流すのには丁度良い

一方のカルマン・ギアも、ビートルより2倍くらいは速く見える。でも、搭載するエンジンは同じ。車重は90kgも増えており、見た目にごまかされた人も多いだろう。

初期のカルマン・ギアに搭載されたのは、1192ccのフラット4で、最高出力は34psだった。1962年には40psへ高められ、1966年になると1300ccへ排気量も大きくなり、50psを獲得。さらに翌年、1500ccエンジンへバトンタッチし、53psになっている。

フォルクスワーゲン・カルマン・ギア(1955年)
フォルクスワーゲン・カルマン・ギア(1955年)

ダリル・コリアーがオーナーのカルマン・ギアも1500cc。エンジンは驚くほど静かで、空冷のフォルクスワーゲンと同じく、変速も軽快。ゲートの感触はフロリード並みにあいまいだ。

トルクは太く、2600rpmから10.4kg-mを湧出する。ルノーの方は、7.4kg-mしかない。最終型の60ps版のカルマン・ギア1.6でも、0-96km/h加速に要する時間は20秒を超える。トルクが太くても、速いわけではない。

オープンでゆったりと流すのには丁度良い質感。コリアーのカルマン・ギアは北米市場向けだから、ハンドルの位置は左。フロリードと同様に、右ハンドル車も用意されていた。

シートは、フロリードほど快適ではない。着座位置が高く、ブレーキペダルを踏むには、足首を上手に動かす必要がある。初期は四輪ともにドラムブレーキだったが、このクルマではフロントがディスクブレーキになっている。

ナピンがオーナーのルノー・フロリードは、四輪ともにディスクブレーキ。1960年代としては先進的な内容だが、パフォーマンスを考えれば、少し手厚すぎる装備でもある。

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