【見逃せない万能主義車】アウディRS7スポーツバックへ試乗 V8ツインターボ

公開 : 2020.07.04 10:20

絶大なパフォーマンスと鋭利なレスポンス

それでも、ダイナミック・モードはめったに選ばないだろう。仮にハードな設定で決め込んでも、フルアタックの気分で運転したいと思わせるクルマでもない。

その理由はいくつかある。まず、599psのV8エンジン。

アウディRS7スポーツバック・カーボン・ブラック(英国仕様)
アウディRS7スポーツバック・カーボン・ブラック(英国仕様)

疑う余地がないほど強力で、8速ATと四輪駆動システムのクワトロと、良いパートナーを組んでいる。どんな状況でも、うろたえない、一貫して爆発的な直線加速を披露する。

絶大なパフォーマンスと、鋭利なほどのアクセルレスポンス。駆動系統は、圧倒的な性能を誇る。だがRS7の場合、それを誇示するような雰囲気が薄い。

試乗車には1450ポンド(19万円)のRSスポーツ・エグゾーストが装備され、排気音の主張は大きい。それでもV8エンジンの唸りは、遠くの深いところに隠されている。時折、軽く叫ぶくらいだ。

ステアリングも同様。RS7の後輪操舵は、知的に統合されている。車重2.1tもある大きなRS7のボディを、機敏で確実なマナーで操れる。一方で、切り初めの即時的な反応は備えていない。

BMW M5コンペティションやメルセデスAMG E63 Sなどに期待する、瞬発的な回頭性ではない。むしろ比較的ステアリングのレシオは大人しい。

それでも、アルカンターラで巻かれたステアリングホイールを少し積極的に回せば、コーナーへ勢いよく切れ込んでいく。望んだとおりに。いつものアウディらしく、手のひらに伝わるフィードバックは、ほとんどないけれど。

トラクションは凄まじい。車重やボディサイズを考えれば、アンダーステアも抑え込んである。コーナーの途中にある不規則な路面の乱れは、フィルタリングされたステアリングのおかげで、意に介せずに済む。

見逃せない万能主義的グランドツアラー

アウディRS7スポーツバックが与えてくれる信頼感は厚い。でも、大きなボディは隠せない。英国の一般道では、車線の幅を塞ぐほど。多少道幅に余裕があっても、視界の悪いコーナーでは慎重に鼻先を向けたくなる。

大きなボディが、RS7の足を引っ張っている。全幅が広すぎ、スリリングな運転を楽しめる郊外の道でも、無心になって運転はできない。

アウディRS7スポーツバック・カーボン・ブラック(英国仕様)
アウディRS7スポーツバック・カーボン・ブラック(英国仕様)

そのかわり、広々とした流れの良い国道や高速道路に出れば、本来の姿を取り戻せる。この環境なら圧倒的な速さを秘めた、グランドツアラーとしての魅力が一気に高まる。

手のひらや耳へ伝わるドラマ性は、さほど濃くはない。しかし、エネルギーに溢れる加速と確かな足さばき、驚くほど快適な乗り心地は、それを上回る説得力がある。

車内も素晴らしくラグジュアリー。長時間を過ごしたくなる。リアシートの広さも充分で、荷室容量は535Lが確保されている。

英国でのアウディRS7スポーツバックの価格は、10万4990ポンド(1385万円)から。BMW M5コンペティションやメルセデスAMG E63 Sと並ぶ値段だ。

走りを素直に楽しみたいドライバーは、BMWやAMGを選ぶかもしれない。それでも、万能主義的なアウディRS7スポーツバックの訴求力は、見逃せないほどに秀でている。

アウディRS7スポーツバック・カーボン・ブラック(英国仕様)のスペック

価格:10万4990ポンド(1385万円)
全長:4980mm
全幅:1911mm
全高:1408mm
最高速度:280km/h
0-100km/h加速:3.6秒
燃費:7.9-8.1km/L
CO2排出量:280-286g/km
乾燥重量:2065kg
パワートレイン:V型8気筒3993ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:599ps/6000-6250rpm
最大トルク:81.4kg-m/2050-4500rpm
ギアボックス:8速オートマティック

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