【本当? テスラがトヨタを抜いた?】時価総額でトヨタ越え テスラの将来、順風満帆? それとも……

公開 : 2020.07.03 05:50  更新 : 2020.07.03 08:52

テスラ成長 まさかこれほど短期間に

筆者はテスラの2003年創業の頃から、アメリカでテスラの動向を見てきたが、まさかこれほど短期間にテスラの事業か急拡大するとは想像できなかった。

テスラ創世記は紆余曲折があった。

テスラのギガファクトリー。敷地総面積は3200エーカー。土地専有面積は約54万平方メートル。
テスラのギガファクトリー。敷地総面積は3200エーカー。土地専有面積は約54万平方メートル。    テスラ

テスラ創業者のマーク・エバーハート氏がテスラの経営から離れても、何度も経営者が入れ替わった。

2007年頃、アメリカでは「テスラはもう、もたない」というメディアの論調が多かった。

その後、2008年に現在のCEOであるイーロン・マスク氏がテスラに対する投資家の立場から経営者の立場に移り、さまざまな戦略を打った。

そうしたマスクCEO創世記に、筆者がテスラで詳細取材した当時の資料を読み直すと、2009年前半時点で、当時唯一生産していた「ロードスター」の累積販売台数は350台に過ぎない。

その約半分は、地元のカリフォルニア州在住者。バックオーダーが1000台だった。

本社は、GMのディーラー跡地を間借りしている状態。

モーターは台湾のFUKUTA電機に依頼して製造。電池は、当時の電池開発担当者が日本国内のパナソニック社員だったこともあり、パナソニック製の円筒型電池の採用を始めていた。

カーディーラーの名残りがある整備施設で、水冷化された大きな電池パックを1台1台丁寧に組み込んでいた。

あれから11年後、テスラは時価総額で世界自動車メーカートップになってしまった。

テスラ、あくまでも自動車ベンチャー

テスラをIT企業という表現をする人がいるが、長年に渡りテスラを観察してきた身としては、そうは思わない。

テスラはあくまでも、自動車ベンチャーである。

テスラが示す、欧州の充電可能ポイント。
テスラが示す、欧州の充電可能ポイント。    テスラ

その上で、なぜテスラがここまで急成長できたかといえば、それは自動車メーカー各社がEVビジネスを軽んじたから、またはEVビジネスの方向性を見誤ったからだと思う。

マスク時代のテスラと同時期にEV量産を始めた、日産三菱自動車にとってのEVとは、大衆車だった。

まさか、巨大な電池パック搭載の高額EVが、これほど大きな市場を作るなどとは、まったく予想していなかった。

そしていま、ポルシェメルセデス・ベンツBMWジャガーなどがこぞってプレミアムEVに参入し、フォルクスワーゲングループが大規模なEVシフトを推進。

中国では新エネルギー車政策でEV販売の義務化など、EVを取り巻く社会環境は10年前とはまったく違う。

この状況で、テスラはどう戦うのか?

「サイバートラック」構想でのピックアップトラックに加えて、日本の軽規格レベルから、ロールス・ロイス級の超プレミアムを狙うのか?

それとも、時価総額が高い時点で、事業全体を自動車メーカー、IT企業、または投資ファンドに売却してしまうのか?

どのようなシナリオも起こり得る。これまでのテスラの経緯を見ていると、そう感じる。

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