【一般道で輝ける720ps】フェラーリF8トリブート・スパイダーへ英国試乗
公開 : 2020.07.05 10:20
人生をより良く楽しくしてくれる
乗り心地は巧みに制御されている。ボタンを押すだけで、さらに上質に変化させることも可能。ステアリングの操舵感は、クイックだがナーバスではない。
マクラーレンの方が、ステアリングも乗り心地も、フェラーリより良い。しかし筆者の場合、人生をより良く楽しくしてくれる方は、フェラーリだ。
電子制御のデフに、素晴らしいトランスミッション。レスポンスに長け、サウンドも磨き込まれたエンジン。なんて贅沢なスポーツカーなのだろう。
リアタイヤのスピードをコントロールし、コーナリングを楽しむ。アクセル操作で運転を味わう。テクニカルな一般道やサーキットのラップタイムでは、マクラーレン720Sの方が速いかもしれない。でも、誰がタイムの違いを気にするというのだろう。
インテリアも筆者好み。マクラーレンのカーボンファイバー製タブは、素晴らしい剛性を備えている。その反面、小さくないロードノイズに包まれてしまう。
一方でF8トリブートのインテリアは、よりフェラーリとして焦点が絞られながら、リラックスもさせてくれる。乗り降りしやすいし、開放的な雰囲気もある。
やや四角く、複雑にボタンの並んだステアリングホイールは、あまり好きではない。ドライバー手前側へ、充分な位置の調整もできない。しかしフェンダーの峰が、1979mmもあるF8トリブートの全幅の目印になる。4本のタイヤの位置は掴みやすい。
ライバルを凌ぐフェラーリのバランス
マクラーレン720Sやランボルギーニ・ウラカンとは異なり、ノーズリフトのオプションはない。筆者には買えるだけの充分なお金はないから、余計な心配だけれど。
巨万の富を手にした人でも、何台もの現代的なスーパーカーが必要になることはないはず。人生にとって速度は速すぎるし、ボディは幅がありすぎる。基本的にどれも、行える内容に大差はない。
ランボルギーニ・ウラカンには、息を呑むようなエンジン・レスポンスがあり、マクラーレン720Sには、驚異的な走行性能がある。しかし実際に所有して、走らせて、感じられる楽しさや幸せのバランスを俯瞰したとき、筆者はフェラーリF8トリブートを選ぶ。
そして、せっかくだから純粋に走りを求めたくなる。筆者の頭上は、晴れた大空ではなく、常にルーフが覆うことだろう。
フェラーリF8トリブート・スパイダー(英国仕様)のスペック
価格:22万5897ポンド(2981万円)
全長:4611mm
全幅:1979mm
全高:1206mm
最高速度:339km/h
0-100km/h加速:2.9秒
燃費:7.7km/L
CO2排出量:296g/km
乾燥重量:1400kg
パワートレイン:V型8気筒3902ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:720ps/8000rpm
最大トルク:78.3kg-m/3250rpm
ギアボックス:7速デュアルクラッチ・オートマティック