【クラシックの鑑定】ランボルギーニ ポロ・ストリコ部門の仕事 レストアから認定書発行まで

公開 : 2020.07.23 11:20  更新 : 2020.12.08 18:45

ランボルギーニは2015年にそのヒストリーの保全を目的としてポロ・ストリコを設立しました。クラシックのレストアや認定書の発行を行う同部門を訪ね、史実の調査を専門とするロドリコ・ロンコニに話を聞きました。

クルマのヒストリーを証明

「ロドリゴ・ロンコニの名は真実を意味します」ロドリゴ・ロンコニ本人は問題のディアブロのデータ表から目を離さずに語る。「わたしの名前がなければ、その証明ができないのです」とべっ甲のメガネ越しに視線を向けながら続けた。

強い口調だが、少なくとも、わたしが彼と出会ってからの3分間を見る限りロンコニは決して横柄な男ではない。彼はとても真面目かつ情熱的で、われわれの突然の訪問に対する驚きをうまく隠して見せた。彼が今取り組んでいるディアブロが抱える問題は些細なことのようでもあるが、必ずしもそうとは言い切れない。

ランボルギーニ・ミウラSV
ランボルギーニ・ミウラSV

車台番号からオリジナルのカラーを調べてみると、1990年代前半に製造された2台のディアブロが該当するのだ。どちらが正しいカラーコードなのか、16万ポンド(2152万円)のクルマが抱える問題はここにある。

これがランボルギーニのポロ・ストリコ部門の古文書担当であるロンコニの仕事だ。

ブランドの歴史を保全

今や名門ブランドはどこも世界中に散らばった旧車のレストアやヒストリーの認定を行う部門を持つが、ランボルギーニも例外ではない。クラシックの市場は年間17億8000万ポンド(2395億円)規模となっている。これは現存するポルシェ911 2.7RSをすべて買い占められる額のほぼ2倍に相当する。

同社は比較的歴史が浅く、フェルッチオやエンツォの死からそれほど時間が経っていない1980年代や70年代に入社したスタッフも残っている。記録が失われてしまう前の今の段階で、ブランドの歴史を保全していこうというわけだ。

ランボルギーニ350GT
ランボルギーニ350GT

ランボルギーニはクラシックの保護に精通したポルシェ・クラシックの助言を受け、2015年にポロ・ストリコを設立したのである。

この部門は比較的小規模だが、これはアヴェンタドールよりも若い部門であることに加えミウラ、カウンタック、エスパーダなど保護の対象となるモデルの少なさにも由来する。

ランボルギーニは1964年の350GTの1号車から2001年のディアブロ最終車までで6900台しか生産していないのだ。対してフェラーリは同期間におよそ6万台を世に送り出している。そしてランボルギーニによれば、マラネロの書庫に保管されている画像や記録は驚くほど詳細だとのことだ。

ミウラのレストアも担当

とはいえ、ポロ・ストリコが取り組まなければならない課題は多い。ロンコニが「真実」と語る、美しい緑色に塗られたミウラSV#4846(画像の個体)のレストアや、オリジナルに忠実なスペアパーツの製造も彼らに課されたタスクである。

彼らの仕事には車両出生証明書の発行も含まれており、これだけで最高1万ユーロ(121万円)もの費用がかかる。しかし現在のオーナーや将来これを引き継ぐひとにとっては、それをはるかに上回る価値を持つのである。

ロンコニが調査する資料
ロンコニが調査する資料

「25年前であれば、ミウラは中古車ディーラーでも手に入ったでしょう」とロンコニはいうが、これは決して誇張ではない。2005年ですら、主要なオークションで非常に程度の良いミウラSVが17万6200ポンド(当時:約3600万円)で落札されているのだ。今日では同じような状態のクルマが150万ポンド(2億円)は下らないだろう。

ガンディーニの傑作であり、ランボルギーニの中で最も価値があるとされるこのモデルは、ロンコニ達にとってもっとも悩みの種となるモデルでもあるのだ。

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