【クラシックの鑑定】ランボルギーニ ポロ・ストリコ部門の仕事 レストアから認定書発行まで
公開 : 2020.07.23 11:20 更新 : 2020.12.08 18:45
認定書の発行には厳しい基準も
「初期のP400やSからSV仕様へのモディファイを、われわれのファクトリーで行ったはずだと主張するオーナーもいます。これは多くの場合事実と異なります」と彼はいう。「ランボルギーニは一部の個体にアップグレードを行っていることもあります。ひどいダメージをおった場合などが該当します。しかしそのデータがないのです」
厳密に言えば、P400にSVのホイールを履かせたり、ハンドリング向上のため215幅のタイヤを装着する(初期のミウラは205を使用した)だけでも、ランボルギーニは認定書の発行を保留するのだ。
これは確かに厳しい基準だろう。しかしモデルによって守るべき点も変わることから、どこで線引きをするか一律に決めるのは難しい。
熟練の鑑定人にとっても判断が難しい事例があれば、特別な審議会を開いてそのオリジナル性を判定することもあるという。例えば、フロント部分を損傷したミウラがポロ・ストリコ以外でレストアされ、さらにVINを再打刻してあったケースだ。
製造時のデータを調査
この審議会に参加するのはランボルギーニのCEOで以前フェラーリF1を率いたステファノ・ドメニカリ、ランボルギーニのCTOでありブガッティEB110のV12クアッドターボの父であるマウリツィオ・レギアーニなどをはじめとするそうそうたるメンバーだ。
こんな面々が揃う審議会で自分のクルマを評価されるなど、ジム・クラークを助手席に、アラン・プロストとルイス・ハミルトンを後席に乗せて運転の試験を受けるようなものだろう。
ロンコニは350GTの初号車のビルドシートに目を通しはじめた。手作業で計測されたシリンダー径がメモされたその書類によれば、このV12は46時間かけて6500rpmまでのテストが行われたようだ。ボルゴ製のピストンとボッシュのオルタネーターが使用され、エンジンの圧縮比は9.5:1であると記載されている。
こんな書類たちが彼らの仕事の基盤であり、飯の種でもあるのだ。「わたしにとってエンジニアが残したデータシートは、まるで宝物のようです。ボブ・ウォレスやダラーラによる最初のミウラのテストレポートも残されています。ただの数枚の紙ではありますが、これを読むと…」ロンコニは口を止めたが、言いたいことは明らかだ。
過去モデルのオリジナル性を保証
ポロ・ストリコはちょうど良い時に誕生した。これらの書類はより良い保管場所に移されることになるだろうが、現時点では空調も整っていない部屋に保管されているのだ。これまでランボルギーニは自らの歴史の保全にそれほど力を入れてこなかったということだろう。
ダラーラやフォルギエリの書いたメモが、スーパーカーの出自を特定する鍵となっている。これにより、ランボルギーニは過去に送り出した作品のオリジナル性を保証することができるのだ。
ロンコニにとって、われわれの取材に応じた30分間は、取り戻すことができない時間だっただろう。しかしわれわれにとってはランボルギーニのタイムマシンを覗くことができる貴重な時間だった。
先述のディアブロのカラーは、その生産当時から塗装屋で働く知人の助けを借りて解決することができそうだ。もしかしたら、この個体そのものの塗装を担当したかもしれないその彼は、もう数週間で退職する予定だという。すべては巡り合わせだということだ。