【3000台限定の最速ミニ】3代目ミニJCW GPへ英国試乗 306psに45.8kg-m
公開 : 2020.07.11 10:20
ぎこちない乗り心地と忙しないトルクステア
これが、ミニJCW GPの性格を物語っている。エネルギーに溢れるものの、洗練という言葉がそぐわない。例えば、ポルシェ911 GT3や一昔前のルノー・クリオ・トロフィーとは違う。
ドライバーの充足感にフォーカスされた、優れた動的性能を伺わせるルックスではある。しかし英国の一般道を走らせた限り、ミニJCW GPは期待どおりではなかった。
まずは乗り心地から。筆者は、硬い乗り心地でも、あまり気にしない。
マクラーレンなどは、スポーツモデルが必ずしも硬い乗り心地でなくてもいいことを示している。もちろん、フォード・フィエスタSTなど、硬い例もある。
一方のミニJCW GPは、硬いだけでなく、荒々しくぎこちなさを感じてしまう。1255kgと悪くない車重ながら、重さを感じさせるようでもある。落ち着きがなく、マンホールやキャッツアイを超えるだけでも乱れる。
アクセルペダルを踏み込むと、トルクステアが生じる。チャレンジングなカーブの続く道では、アルファ・ロメオ4Cのように忙しない。
ドライバーとクルマとの一体感が強ければ、忙しなさは運転を楽しむ一部になることもある。でもミニJCW GPの場合は、大変さの方が先に立ってしまう。
見た目に負けないアグレッシブさを備えるのが、エンジン。2.0Lユニットからは、306psと45.8kg-mという不足ないパワーとトルクが生み出される。
低回転域では多少のターボラグがあるものの、レスポンシブで吹け上がりも軽快。フルスロットルからアクセルを離すと、激しいアフターファイアーの破裂音も鳴らしてくれる。
理想は初代のミニJCW GP
折角のエンジンへ水を指すのが、8速ATしか選べないトランスミッション。デュアルクラッチ・ユニットのように、シャープなつながりで変速を楽しむことはできない。シフトダウン時には2秒ほど、ためらいが生じることもある。ヤキモキしてしまう。
もちろん、ミニJCW GPの性格が輝く場所はある。サーキットだ。
アルファ・ロメオ4Cは、砂の浮いた滑らかなテストコースだけでなく、英国の少し湿った平滑なサーキットでも、素晴らしい走りを楽しめた。おそらく3代目ミニJCW GPも、似たコンディションでなら、爽快なドライビング体験を味わわせてくれるのだろう。
イタリア生まれのアルファ・ロメオ4Cは、英国の一般道とは相性が合わなかった。果たして英国生まれの新しいミニJCW GPは、英国の一般道で事前にテストされたのだろうか。
筆者が求めるのは、初代のミニJCW GPのようなクルマ。軽く、ほどほどにパワフルで、小さく機敏。理想的なモデルだった。
3代目ミニJCW GPを好きになれる人は、本当にミニを愛せる人だけだろう。完成度は高いと思う。派手なリアウフィングを備え、見た目も魅力的な、台数限定の特別なミニだ。これだけでも評価はできる。そして、かなり速い。
でも、素晴らしいドライビング体験を得られるホットハッチなら、英国ではフォード・フィエスタSTという選択肢がある。必要な費用は、ミニJCW GPの半分で済む。
ミニ・ジョン・クーパー・ワークス(JCW) GP(英国仕様)のスペック
価格:3万5345ポンド(473万円)
全長:3838mm
全幅:1727mm
全高:1415mm
最高速度:264km/h
0-100km/h加速:5.2秒
燃費:13.7km/L
CO2排出量:167g/km
乾燥重量:1255kg
パワートレイン:直列4気筒1998ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:306ps/5000-6250rpm
最大トルク:45.8kg-m/1750-4500rpm
ギアボックス:8速オートマティック