【悩むべきはリムジンかツーリングか】新型 アルピナB3 リムジンへ試乗 468ps 前編
公開 : 2020.07.13 10:20
次期M3と同じS58ユニットに専用ターボ
トランクリッドには、リップスポイラーを装備。リアバンパーはデザインの変更を受け、合計4本の円形マフラーカッターが光る。わずかに下げられた車高が絶妙なスタンスを作り、標準の3シリーズとの違いを強調するようだ。
インテリアにも、アルピナ独自のトリムパーツや内装素材を採用。メーター用モニターのグラフィックはアルピナ専用で、ブランドカラーともいえる黄緑を配色。スピードメーターとレブカウンターで、クールに主張する。
新しいB3が選んだエンジンは、次期M3やM4にも搭載予定の、BMW Mディビジョンが開発したS58ユニット。排気量3.0Lの直列6気筒ツインターボだ。
アルピナが、標準のBMW製ユニットではなく、Mディビジョン由来のユニットを搭載するのは、今回が初めて。M3とはまったく異なる性格を、B3へ与えている点が興味深い。
最大の違いは、新しいターボチャージャーを採用すること。次期M3と同じターボ・ハウジングを利用するが、その内側はアルピナによる独自開発。流量を最適化した低慣性タービンを備え、吸気効率を高めている。
エアインテークも独自設計のもので、冷却系も新開発。ボッシュ製の、DME8.6 Sと呼ばれるECUでエンジンを制御する。エグゾーストもアルピナ・オリジナルのステンレス製となり、独自のパティキュレート・フィルターを装備する。
太いトルクが生み出す圧倒的な加速力
縦置きされるS58ユニットが生み出す最高出力は468psで、最大トルクは71.2kg-m。N55ユニットを採用していた先代のアルピナB3 Sと比較して、29psと4.0kg-mの増強となる。ちなみに、同じS58を搭載する次期M3は、479psと61.1kg-mになる見込み。
勉強はこのくらいにして、B3を発進させてみよう。
最新のアルピナB3は、道が許せば、驚異的に速い。そして、明らかに次期M3のドライビング体験とは異なる。意図的に変えてあるのだろう。
BMW M3がエンジンの回転数の高まりとともに、パフォーマンスを引き出していくのに対し、B3は山のように太いトルクでスピードを乗せていく。50年以上続く、アルピナの伝統手法といえる。
アクセルペダルを強く踏み倒す。静止状態からでも、ATの段数を保った中間加速でも、見事な加速を披露する。
M3ほどの音響面での至福感は得られないものの、B3の圧倒的な加速力は、それを度返しにするほど。B3が得た小径のターボは、トルクカーブを全体的に上乗せするだけでなく、突出した回転マナーも与えている。
アクセルペダルの入力へシャープに反応し、積極的に回転数を高めていく。特にトルクの山が続く中間回転域では、最高のアグレッシブさが楽しめる。
パワーデリバリー自体も惹きつけるような勢いがあり、それでいてシルクのように滑らか。あまりに気持ちよく吹け上がるから、7000rpmのレッドラインが控えめに感じられてしまった。
この続きは後編にて。