【瞬発力はAMG C 63以上】メルセデスAMG CLA 45 Sシューティングブレークへ試乗
公開 : 2020.07.17 10:20
スタイリング優先の実用性
極端な状態下では、すべてのトルクを前輪か後輪へ分配することが可能。もちろん前後50:50にもできる。ドライバーがクルマの挙動を選べる、多くのドライブ・モードも搭載する。
サーキットでは、最高の走りを楽しめる。同時に、最も穏やかなドライブ・モードを選択すれば、そんな荒々しさは微塵も感じられない。
前輪の間には、ハッチバックのA 45 Sと同じLSDを搭載。電動式パワーステアリングとデュアルクラッチAT、アダプティブ・サスペンションも譲り受ける。
インテリアも共通点が多い。明るく目を引くモニターと、Aクラスのように若干省コストを感じる部分に納得できれば、きっと気にいるはず。個人的にAMGなら、もっと本物の金属を使用してほしいところだ。
フロントには、AMG製のシリアスなバケットシートが2脚並ぶ。その結果リアシートの膝周りは、やや制限を受けている。頭上空間も、必要充分という程度。
ファミリー・ワゴンとして気になったのが、リアドア内張りの握り部分。乗り降りする際、足に引っかかる形状で突き出ているようだ。
スタイリング優先のステーションワゴンだから、荷室容量もリアハッチの開口部も、妥協はある。本格的な高性能ワゴン、フォルクスワーゲン・ゴルフRエステートなどには並ばない。そもそも、メルセデス・ベンツは初めから承知済みなはず。
実用性だけを見れば完全とはいえない。しかし、ハッチバックのA 45やサルーンのCLA 45の実用性を高めたと考えれば、不満はないだろう。長尺の荷物もちゃんと収容できる。
素直でありながら荒々しい二面性
走り始めると、AMG CLA 45 Sシューティングブレークの二面性が面白い。とても素直に走るお手本のようなクルマでありながら、目まいがするほどの激しいパフォーマンスを見せつけてくれる。
一般道を速めのペースで普通に運転している限り、ソフトなサスペンション設定なら、乗り心地は穏やか。ただし、強い衝撃でバンプストッパーに当たることはないものの、瞬間的に、ドキッとするほど落ち着きを失う場面がある。ボディとシャシーが別の方向へ動きたがるように。
ステアリングの反応は鮮明で、フィードバックも濃く、操縦性には優れる。乾燥路面でのグリップ力は凄まじいものの、濡れていれば、驚くほど簡単にトラクションを失わせることも可能だ。
1L当たり200psを超えるパワーを生み出すエンジンは、高速道路なら燃費は13.5km/Lに届く。巨大なターボを装備し、ピークパワーの高さやトルクの山がある割に、どこを走るにしても気難しいことはない。
ドライブ・モードを切り替える度に、AMG CLA 45 Sシューティングブレークの能力に並ぶライバルは、ほとんどいないと実感する。
A45 Sとホイールベースは同じながら、トレッド幅はCLAの方が少し広い。それでもコンパクトなボディは、狭い道でもストレスを感じさせないプロポーションを保っている。
エンジンはフロントタイヤの車軸より前方に搭載されているものの、位置はかなり低め。低い重心が、コーナリング時にボディをフラットに保てる要因の1つとなっている。