【フレンチブルーのアルファ】アルファ・ロメオ8Cモンツァの栄光 前編

公開 : 2020.07.25 07:20  更新 : 2020.12.08 08:33

バランスに優れシャープでレスポンシブ

ターンイン時にアクセルペダルを踏むと、緩いアンダーステアを示す。コーナーの頂点を過ぎるとバランスを取り戻し、加速と同時に漸進的にオーバーステアへ転じていく。

かつて、もとレーサーのアラン・デ・カディネットはシルバーストーン・サーキットでパワースライドを楽しんでいた。目一杯のカウンターステアを当てて。滑らかな路面の現代的なサーキットでは、8Cモンツァはより踊りたがりだ。

アルファ・ロメオ8Cモンツァ(1933年)
アルファ・ロメオ8Cモンツァ(1933年)

ドイツ人レーサーのフランク・スティップラーは、個人的な8Cのテストドライブで、モンツァはスパイダーよりバランスに優れ、シャープでレスポンシブだと述べていた。リアに搭載された2本のスペアタイヤの影響で、テールの重量が増え、慣性が大きかったのだろう。

設計されたのは90年近く昔だが、パフォーマンスは今でも注目に値する。車重は900kg。エンジンはジム・ストークスの手によってリビルトされ、200psは出ている。

0-97km/h加速を8秒以下でこなし、最高速度は190km/hを超えるほど力強い。リジットアクスルにリーフスプリングという、ビンテージなリア周りなこともあって、とても速く感じる。

荒れた路面を走る時は、間違いなくシートベルトが必要。短いスプリングで乗り心地は硬い。同乗者のいないレーシーなコクピット。体を支えるサポートはほとんどない。

タイトなコーナーを、4スポークの大きなステアリングホイールを握ってターンする。ステアリングホイールを掴む手に力が入る。

本物は中心のボタンがアクセル

ロッドとレバーで操作するドラムブレーキは、強力に効く。だが前後バランスのセットアップは重要。先進的なアルファ・ロメオ6C-1750とは異なる。

多くのアルファ・ロメオ8Cは現代的なペダルレイアウトへ改められているが、本物は中心のボタンがアクセル。コーナーでシフトダウンする時、ヒール&トウをするのには最適のポジションだ。

アルファ・ロメオ8Cモンツァ(1933年)
アルファ・ロメオ8Cモンツァ(1933年)

センタートンネルからそびえるボックスから、エレガントなシフトレバーが長く伸びる。明確なHパターンが磨かれたゲートに切られている。リバースへ間違って入らないように、カバーも付いている。

シンクロメッシュはなく、変速は難しい。ギアを傷めないためにも、変速は丁寧さが求められる。

夢のようなアルファ・ロメオ8Cモンツァへの試乗。容赦なく降る雨が、サーキットに大きな水たまりを作る。不規則な走行ラインを強いられる。

冷たい水がリアタイヤから跳ね上がり、シャワーのようにドライバーへ降りそそぐ。フロントタイヤからも水しぶきが容赦ない。ずぶ濡れになってしまったが、危険だと判断されるまで、楽しくサーキットを走り込んだ。

ピットに戻り、ジム・ストークスのトレーラーへ8Cモンツァを仕舞う。思わず、フィリップ・エトンスランのレースと重ねてしまう。フランス・ポーの街は、今日と似た薄暗い空だったはず。

1933年シーズンは、古い城下町に作られた新しいストリート・サーキットから始まった。ポーで開かれるグランプリは、1930年以来。初めは、117号線を使用した三角形の高速コースだった。

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