非力な電気モーターと1600kgもある車重

英国の交通の流れに合わせて運転しようとすると、電気モーターだけでなくエンジンの力も必要になる。スポーツ・モードにして、アクセルペダルを踏み、クロスシードを活気づけなければ離されてしまう。

結果的に、環境へ配慮した運転ではなくなる。モーターが非力だから、エネルギーを節約する以前に、エンジンを回さないと充分には走れないのだ。

高速道路を法定速度で流すような場合でも、1600kgもある車重が常に足を引っ張る印象。その歯がゆさが、ドライビング体験の中心だった。

ただし、乗り心地や操縦性は充分に評価できる。欧州で主に開発したという、キアの主張を示すようだ。

サスペンションは硬めだが、減衰力の設定は良好で、基本的に乗り心地はフラット。タイヤは、控えめの16インチの205/60というサイズだから、ロードノイズも穏やか。

ステアリングの操舵感は、ドライブ・モードによってアシスト量が変化するが、違いはわずか。レシオはクイックな方で、ロックトゥロックは2.6回転。正確性は良好といえる。

ブレーキの制動力は効果的に立ち上がるが、複雑なPHEVという理由で、一貫性には欠ける。回生ブレーキと物理的なブレーキとが混在するためだろう。これらが相乗し、キア・クロスシードPHEVを活発に走らせたい、という気持ちにはなりにくい。

メリットが見えにくいPHEV

キアはガソリンエンジン・モデルも、純EVモデルも製造しているメーカー。正直、キア・クロスシードでPHEVを選ぶ理由を、考えさせられてしまう。

検討しているなら、ライバル・ブランドのPHEVと乗り比べてみてほしい。環境に優れたパワートレインという触れ込みで売られていても、キア・クロスシードPHEVへ1週間も乗れば、メリットが見えなくなってしまいそうだ。

キア・クロスシード自体は、良くできたクルマだと思う。作りも良いし、見た目も悪くない。7年間の保証は魅力的だ。しかし車重のかさむPHEV版に限っては、もっと開発を詰めた方が良い、といわざるを得ないだろう。

キア・クロスシード1.6 GDi PHEV 3（英国仕様）のスペック

価格：3万695ポンド（411万円）
全長：4395mm
全幅：1826mm
全高：1490mm
最高速度：172km/h
0-100km/h加速：10.4秒
燃費：71.5km/L
CO2排出量：32g/km
乾燥重量：1596kg
パワートレイン：直列4気筒1580cc＋電気モーター
使用燃料：ガソリン
最高出力：141ps/4000rpm（システム総合）
最大トルク：26.9kg-m/4000rpm（システム総合）
ギアボックス：6速デュアルクラッチ・オートマティック

画像　クロスシードとC-HR,ヴェゼルを比較　全88枚