【ピカピカのアマゾンは記憶の証】ボルボ・アマゾン123GTと122S 後編

公開 : 2020.07.26 16:50  更新 : 2020.12.08 08:33

レース用チューニングで200psを獲得

「クラシック・モーターショーへアマゾン123GTで乗り付け、グリーンの122Sの隣に並べることしか考えられませんでした。この2台が一緒に並ぶなんて、信じられない光景に思えました」

完成目標は、2019年11月。熱の入ったデクランは、父の友人やボルボ・オーナーズクラブの古株、クリス・キーブニーの手を借り、夜遅くまで毎週末を費やして作業を続けた。

ボルボ・アマゾン123GT
ボルボ・アマゾン123GT

「キーブニーがいなければ、NECクラシック・モーターショーには間に合わなかったでしょう。先にエンジンが届きました。ネザーランドのベン・フリエマンの手による、特別なリビルトが施されたエンジンです」

「おそらく、世界最高のレース用ボルボ・エンジンを組める人物です。116psでは、わたしは満足できないだろうと考えていました。トルクが太い、運転しやすいユニットが欲しかったんです」

「フリエマンはB20ユニットをもとに、ロングストロークのクランクを組んで、排気量を2.5Lに増やしています。カムもアグレッシブな仕様で、インレットとエギゾースト・マニフォールドに合うように、ヘッドはポート加工が施してあります」

「キャブレターは45DCOEのツイン・ウェーバー。大きなベアリングが採用された、M41J Gタイプと呼ばれるトランスミッションが組まれています」

「獲得した最高出力は200ps。最大トルクは33.1kg-mです。オリジナルの馬力を考えれば、悪くない結果だと思います」 大人しいグリーンの122Sサルーンと並ぶと、2ドアの123GTは野性的だ。

父の献身的な姿の記憶が原点

アクセルペダルを軽く踏むだけで、123GTのステンレス製エグゾーストからは怒ったようにノイズが溢れる。「賑やかですよね」 デクランは満足げだ。

「スロットルを大きく開ける必要はありません。6000から6500rpmまで気持ちよく回ります。ピストンやロッドなど、軽量なレース用部品が沢山組んであります。クランク単体でも3000ポンド(40万円)するんです」

ボルボ・アマゾン123GT
ボルボ・アマゾン123GT

車高は前後60mm落とされている。クラシック・スウェド社製のスプリングと、GAZ社製の調整式ダンパーによるものだ。ブッシュ類はポリウレタン製。一部の珍しい部品は、父を知っていたカークラブのメンバーから譲ってもらったという。

そんなお宝部品の1つが、ノルディック社製のロッカーカバーと、新品の初期型グリル。今では入手が極めて困難だという。

デクランは父と同じように、可能な限り自らの手でレストアを進めた。白いボディと黒いルーフに塗り分けられた塗装も、彼自身によるもの。「ボディパネルの修復から塗装まで、自分で行う方法を学びました。溶接やスプレーガンの持ち方なども」

サンド掛けから磨き込みまで、ボディを手作業でピカピカにするために、120時間以上を費やした。その熱意は、父の献身的な姿を目にした記憶が原点になっている。

「電動工具やポリッシャーなどを使っている姿は、見たことがありません。父はいつも、自らの手で作業していました。ビジョンをもって仕事に取り組み、達成するまで諦めませんでした」 と、振り返るデクラン。

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