【期待と疑問】日産アリア販売開始、2021年半ば 価格はレクサスRX級 どうなる130kW急速充電?
公開 : 2020.07.16 11:50 更新 : 2021.06.04 11:13
日産アリアの充電環境はどうなる?
気になったのは、充電についてだ。
プレゼンの中で、「出力130kWの急速充電で375km走れる」という表現が出てきた。
満充電での航続距離は、世界標準の燃費/電費テスト基準あるWLTCモードで、2WDのバッテリー容量90kWhが610km、最上級のAWD・90kWh車で580kmとなる。
ここでのポイントは、出力130kWの急速充電だ。
「リーフ」など、既存のEVを通じて世間に知られているように、EVの充電には大きく2つの方法がある。
1つは、家庭や企業などでの交流で行う普通充電。出力が低いため、満充電まで「ひと晩かかる」のが一般的だ。
もう1つが、直流を使った急速充電。日本の場合、電力会社や自動車メーカー各社が共同で企画したCHAdeMO(チャデモ)規格がある。
高速道路のサービスエリア、道の駅、コンビニやスーパーなど全国約8000か所に設置されている。
東京電力ホールディングスEV推進室によると、「現在使用されている機種の多くが出力30kWで、今後は50kW化を促進したい」という。
つまり、現状でアリア90kWhを出力30kWで充電するとなると、90kWh÷30kW=3時間を要する。
それを、日産が言う出力130kWでやれば、90kWh÷130kW=0.69時間(41分間)で終えることができる。(※急速充電では、電池の特性などを考慮し、満充電の約80%で充電を終えることが推奨されている)
そんな高出力の充電設備を、日産が自前で増やすというのか?
今回の発表 「期待外れ」だったこと
チャデモでは、ポルシェのEV「タイカン」用に出力150kWの急速充電を可能としているが、こちらは800Vで対応している。
アリアについて電圧の詳細は明らかにされていないが、急速充電による熱対策も考慮してか、電池パックはリーフの空冷式ではなく水冷式を採用している。
そして、価格も気になる点だ。
2WD・65kWh車で、EVに関する補助金などを使い実質500万円台からとなると、最上級車は600万円後半から700万円台になると予想される。
これでは、レクサス「RX」級の高級車である。
一方、クロスオーバーEVのベストセラー、テスラ「モデルX」に比べるとリーズナブルで、新型「モデルY」といいとこ勝負になりそうだ。
それからもう1点。今回のプレゼンテーションで「期待外れ」だったのは、EVを活用した新サービスの提案がまったくなかったことだ。
定額支払いのサブスクリプションモデルや、シェアリングといった既存ビジネスではない、日産による独創的なEVサービスの発表を期待していた。
アリアを「日産の新たな扉を開くモデル」と銘打つからには、これまでのクルマの常識を打ち破るようなサービスが登場することが不可欠に思える。
この分野については、充電インフラの件も含めて、2021年中頃の正式発売時に明確になることを、改めて期待したい。