【最高速度400km/h超】マクラーレン・スピードテールへ試乗 1070psのハイパーGT 後編
公開 : 2020.07.20 10:20
シロンを打ち破る0-300km/h加速13.0秒
加速力にも目をみはる。シロンのように、パワーで空気を押し避けるような暴力性はない。スピードテールの流麗なボディは、空気の中をなめらかに進む。むしろ、空気の中を突き進んでいる感覚が薄いくらい。
これこそ、出力で勝るブガッティ・シロンを打ち破る、0-300km/h加速13.0秒を叶えている理由だ。
あまりの高速移動に神経が疲れてアクセルペダルを緩めても、空気の塊に勝てず、急速な減速が生じることもない。スピードテールは、穏やかに速度を落としていく。
そのため、優れたブレーキも求められる。ペダルの踏み始めはフィーリングが皆無だが、制動力が高まるほどに感触が豊かになる。
最高速度は400km/hを超える。誰も到達できないであろう、超高速域で求められる安全性に必要な装備がなければ、さらに速度は伸びるはず。ホイールやタイヤ、サスペンション、ブレーキなどは、理想よりも重たい。
最高速度にばかり目が奪われるが、本質的にスピードテールは一般道を普通に走らせるだけで、素晴らしい体験が得られる。美しいボディとインテリア、完璧なドライビングポジション、乗り心地や操縦性を味わうのに、240km/hで走る必要もない。
スピードテールは、マクラーレンF1にかわる存在ではないといえる。レースを想定していないからではない。そもそもF1も、レーシングカーとして生み出されたわけではなかった。デザイナーのゴードン・マレーは、レースを戦う前提なら、別の設計をしただろうと話していた。
F1は、軽さを第一に優して設計されていた。一方のスピードテールが考慮していたのは、最高速度だ。
遠くて近いスピードテールとF1
一方でF1とスピードテールは、読者の想像以上に近い親戚でもあるといえる。ドライバーズシートの位置と、生産ライン以外の面でも。
マクラーレンF1も、実際にオーナーが試すかどうかは関係なく、ずば抜けたパフォーマンスを備えていた。乗り心地は望外に良く、不足のない荷室があり、エアコンなど1990年代のエキゾチックモデルとして不満のない装備があった。
マクラーレン・スピードテールも、F1も、スーパーカーとして見られることは同じ。富裕層のドライバーへ、至高のドライビング体験を与えてくれる。しかも仕上がりは、その時代で秀逸。希少で魅惑的だ。
しかし何より強調したいのは、普通に運転しているだけで極上な体験だということ。どんなライバルモデルを持ってきても、スピードテールの水準に並ぶことはできないだろう。
パワフルでハイスピードなだけではない。軽量で知的だ。つまりスピードテールは、マクラーレンを体現したクルマなのだと思う。
なお、106台の初代オーナーは、すでに決定済みだという。
マクラーレン・スピードテール(英国仕様)のスペック
価格:210万ポンド(2億8140万円)
全長:5137mm
全幅:−
全高:−
最高速度:402km/h
0-300km/h加速:13.0秒
燃費:−
CO2排出量:−
乾燥重量:1499kg
パワートレイン:V型8気筒3994ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:1070ps(システム総合/エンジン:757ps、モーター:313ps)
最大トルク:117.0kg-m(システム総合/エンジン:81.4kg-m、モーター:35.6kg-m)
ギアボックス:7速デュアルクラッチ・オートマティック