【相次ぐ中止と廃止】旧来型の欧米モーターショーは2016年にすでに限界 バンコク形式ヒント? 東京も課題
公開 : 2020.07.20 09:25
課題は販売のテリトリー制
バンコクショーの方式は、けっしてメーカーからユーザーへの直販ではなく、バンコク周辺のディーラー各社が共同で対応している。
その割り振りについて詳しいことはメーカーは明らかにしていないが、タイの商慣習として許容範囲という印象を受ける。
一方、日本でこれをやるとなると、メーカーの直接資本ディーラー、または独立系のディーラーとのすみ分けを含めて、現行型モーターショーでの販売行為は難しい。
だた、自動車メーカー各社幹部と意見交換していると「ショー存続のためには、(バンコク型のような)東南アジアのケースも考慮するべきかのかもしれない」という声があるのも事実だ。
逆に言えば、自動車メーカーは現行型モーターショー存続に疑問を持っている。
実際、直近でデトロイトショー、パリショー、フランクフルトショー、ジュネーブショーなどへの出展社の減少が止まらない。
そのため、デトロイトショーは趣向を変え夏開催を試みるも新型コロナウイルス感染の影響で中止に。フランクフルトショーは事実上、廃止となり、21年に新規のミュンヘン開催となる。
ジュネーブショーが20年開催直前に中止となり、21年開催をすでに断念。
こうしたモーターショー転換期の兆候は、少なくとも2016年には表面化していた。
進む ディーラーショールーム化
2016年1月、筆者はパリショー主催社の社長ら(当時)と米ラスベガスで意見交換をした。
その際、先方から出たのが「単純に新車を並べて見せるスタイルのショーでは、経営が成り立たない。そのため、新たなるショーの形を早期に検討する必要がある。何か策はないか?」という切実な叫びだった。
この時点ですでに、自動車メーカーのモーターショー離れは本格的に進行していたのだ。
戦後、世界各地での経済成長の象徴として、未来の生活を実体験できるモーターショーや万国博覧会への注目が集まった。モーターショーは夢を売る場所だった。
それが2000年代後半頃から、登場するコンセプトモデルは数年内に量産化が確定しているケースがほとんどで、技術的な展示も減り、ショーのディーラーショールーム化が進んだ。
脆弱化していたモーターショーが新型コロナウイルス感染をきっかけに、存続不能に陥ったのだ。
今後、ワクチンなど新型コロナウイルスへの対策が講じられたとしても、はたして東京モーターショーはどうなるのか?
2019年は事実上、トヨタ自前の入場無料エリア実施などで来場者は前回比大幅増となった。
2020年に入り、新車発表の各社独自企画によるオンライン化が進む中、東京モーターショー2021はどういった姿になるのだろうか?
開催予定日まで残り、約1年3か月だ。