【詳細データテスト】 ベントレー・フライングスパー F40と同等の加速 期待以上のハンドリング 快適性には注文あり
公開 : 2020.07.25 11:50
内装 ★★★★★★★★☆☆
このクルマ、じつに大きくて重いのだが、調整箇所の多い二重ステッチの入ったシートに身を沈め、ソフトクローズのドアが閉まる際のクリック音を耳にすると、これはドライバーズカーなのだと確信できるはずだ。
キャビンは低く、包み込まれるようで、ほかの超高級サルーンの多くとは異なる雰囲気を醸し出す。前後席ともショルダールームは広いが、ルーフとウインドウ上端のラインは頭上に近い。
視界はやや限定される。太いピラー、とくにBピラーとCピラーによって、車外に目を向けると視野を損なわれる。リアウインドウも郵便ポストの投入口のようで、ルームミラーには映ると、はるか遠くにあるように見える。
もっとも、このクルマのとんでもなく贅沢なキャビンに身を置けば、それほど外の世界を目に入れたくなるかどうかは怪しいところだ。
インテリアは、コンチネンタルGTのそれにきわめて近い。トランスミッショントンネルもベルトラインも高く、すっかり沈み込んだように感じさせられる。シフトセレクター周辺に集められたスイッチ類や、12.3インチのインフォテインメントディスプレイもまた、2ドアのベントレーに共通のアイテムだ。
相違点は、センターパネル下部のデザインだ。ダッシュボード両端には、クルーのトレードマークともいうべき円形のアルミを用いた送風口が設置されるが、中央には角張って彫刻的な新形状のものが据えられている。その下には空間が設けられ、携帯電話などを収納できるようになっているが、ものを置いた後でも、送風口周りの装飾がみせる金属のクールさに目を惹かれる。
豪華なマテリアルにより本物感が際立つインテリアだが、まったく非の打ちどころがない、というわけでもない。クロームは常に、それらしい輝きを放っている。それゆえ、その部分が本当に金属なのかどうか確かめるには、触ってみるしかない。そうすると、見た目通りのマテリアルを使っているのは半分ほどだとわかる。たいしてガッカリするようなことではないのかもしれないが。
対して、レザーやウッドはこれまで通りみごと。ベントレーはその伝統的な高級素材に、最新で最高のテクノロジーをブレンドしたが、そのやり方がまた、じつにみごとなのだ。にわかに信じがたいが、20年前のベントレーがみせた、そうした技術の使い方と見分けがつかないのだ。
後席の快適性は、ほとんど誰もがとても幸せだと感じられるようなもの。たとえ、背の高い乗員が期待したほどのヘッドルームを得られなかったとしてもだ。テスト車はパノラミックサンルーフ装着車だったので、余計に頭上を圧迫していたのだが、それでもである。
枕のようにふんわりしたヘッドレストは心地いい。しかし、伸縮式のオットマンや倒して寝れるシートが、オプションリストにすらなかったのは驚きだ。いまどきの高級サルーンになら、たいてい用意されているのだが。