【詳細データテスト】 ベントレー・フライングスパー F40と同等の加速 期待以上のハンドリング 快適性には注文あり
公開 : 2020.07.25 11:50
操舵/安定性 ★★★★★★★★★★
ベンテイガSUVの開発以来、ベントレーはシャシーやサスペンションに新たなアクティブ制御の導入を進めてきた。これは大柄な高級車を、より小さくしなやかで俊敏なクルマを走らせているように感じさせることを狙ったものだ。
このクルマでは、四輪操舵システムが採用された。となれば、とにかく知りたいことはひとつだ。すべてのシステムは、きちんと協調しているのだろうかということだ。
客観的な感覚に徹するなら、答えはおおいにイエスだ。というのも、このクルマがボディを沈み込ませてターンインし、この重いクルマをコーナリングさせる一連の動作が上首尾だということに、疑うところはないからだ。
一般論でいえば、高級サルーンのハンドリングは、このクルマの半分にも及ばない。ほかの後輪駆動モデルであれば、旋回時に高い負荷が掛かると、電子制御に頼り、スプリングの上で穏やかにシーソーのような揺れを繰り返す。その点、フライングスパーは驚異的な精密さと安定性をもって、アペックスをかすめてひたすらコーナリングしていく。
走行モードをスポーツに入れると、ボディコントロールは間違いなくもっとも緊密になる。ステアリング入力へのレスポンスも、ハンドリングのバランスもベストだ。
このモードでも、左右のボディコントロールは上下以上に優れたところを示す。かなり荒れた路面で飛ばすと、サスペンションはボディを水平に保ち、浮き上がりや波打ちを抑えるために多くの仕事を課されることになるが、おおむね、どうにかこなしてしまう。
それでも、テスター陣の大部分が好んだのはベントレーモードだ。サスペンションのセッティングはわずかながら緩やかになるが、ステアリングのフィードバックは一貫性を増す。大きく速い高級サルーンはこういうものだろうと、予想するとおりのハンドリングにより近づくと言い換えてもいい。
Sクラスのように、リラックスして指1本でステアリングを操れるサルーンではない。サイズは、ロールス・ロイスのファントムほどではないが、それでも大柄でワイドだ。対面通行では、対向車側へはみ出さないよう片輪で側溝の蓋を踏まなければならない場合もあるが、その際には集中力が必要になる。
しかし、ベントレーモードであれば、手のひらにしっかり伝わるステアリングのフィードバックとスロットルオンでの優れたスタビリティ、ハンドリングの正確さが相まって、そんな難題もただこなすだけでなく、かなり楽しむことさえできる。