【2CVとDSの間に生まれた優等生】シトロエンGS 187万台のビッグヒット 後編
公開 : 2020.08.08 16:50 更新 : 2021.03.05 21:42
軽快に吹け上がるフラット4
車内を見渡せば、安価なプラスティック製部品が大多数。エンボス加工されたドアの内張りも、いかにも安っぽい。
それでもダッシュボードは少し未来的なデザインが与えられている。ドラムが回転するサイクロプス・アイと呼ばれるスピードメーターが、クラブ仕様には装備されていた。切り取られたレブカウンターの横には、時計が付く。
英国仕様の場合、一般的な円形のメーターが取り付けられていた。フランス人のGSのユーザーは、羨んだことだろう。
もう1つの特徴は、ダッシュボードに配されたハンドブレーキ・ノブ。開発の後半までは、2CV風のプッシュ・プルタイプのシフトレバーが付いていたという。
運転すると、小さなエンジンの甘い味わいが、第一印象に来る。農業機械のような2CVの2気筒とは異なり、スムーズに吹け上がる。アクセルを深く踏むめば、トルク不足は気にならない。回転数の上昇に合わせて、速度を乗せる。
クラッチはスムーズ。シフトノブを操作して、エンジン・サウンドの変化を聞くのが楽しい。フロアから伸びるシフトレバーは、ストロークが長い。ノッチが付いていて、スロットへ滑らせる度に正確にカチッと決まる。
ステアリングはラック・アンド・ピニオン式で、パワーアシストはなし。素早く軽快に回転するが、乗り心地は穏やか。低い速度域ではわずかに揺れるものの、上位モデルのDSなら、この船のような柔らかさも解消されている。
ふっくらとクッションの効いたシートが、快適さを高めている。風切り音も小さい。
短距離選手ではなく長距離選手
ブレーキの効きも良好。4輪ともに強力なディスクブレーキだ。しかし感触には乏しく、少しの慣れは必要だろう。
筆者の経験的に、GSは1220ccの方が良いことは知っている。エンジンはよりフレキシブルで、燃費も良い。それでも小さな1015ccを小気味よく回し、56psを自由に引き出して楽しむ魅力も捨てがたい。
シトロエンGSは、短距離選手ではなく長距離選手だ。一度スピードを乗せたら、落ち着いてドライブするのがイイ。空気抵抗に優れたボディが、走りを助けてくれる。
1970年にシトロエンGSが発売された頃、英国のブリティッシュ・レイランド社は、旧式のマリーナをモーリス・マイナーとするべく改良を加えていた。フォードは、アメリカンなMkIIIコルチナをリリースした。
刺激に欠けるライバルを考えると、GSの未来感が改めて見えてくる。新鮮でモダン、極めて扱いやすく熟成されていた。クラス上のモデルのような印象すらあった。シトロエンが時間をかけて創生したGSは、ライバル企業を焦らせたに違いない。
シトロエンにとっては、良い稼ぎ柱にもなったGS。整備費用もそれなりに必要だった。でも、素晴らしいクルマだと感じられるのは、筆者だけではないと思う。
シトロエンGS(1970年〜1979年)のスペック
価格:新車時 1088ポンド/現在 4000ポンド(53万円)前後
生産台数:187万4754台(総計)
全長:4120mm
全幅:1608mm
全高:1350mm
最高速度:155km/h
0-96km/h加速:15.9秒
燃費:9.1km/L
CO2排出量:−
乾燥重量:864kg
パワートレイン:水平対向4気筒1015cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:56ps/6500rpm
最大トルク:7.1kg-m/3500rpm
ギアボックス:4速マニュアル