【1990年代を沸かせた和製スポーツ】スープラにGTO、フェアレディZ 後編
公開 : 2020.08.09 16:50 更新 : 2021.01.28 18:01
メカニズムのバランスが良いZ32
スープラも完璧ではない。ゲトラグ社製のトランスミッションは、変速タッチは軽いもののストロークが長い。ゲートをスライドさせると、不自然な引っ掛かりがある。
ステアリングも同様。直進状態からの切り始めは、軽すぎる。ダッシュボード上からトラクションコントロールをオフにし、派手なテールスライドをとっさに抑えるには、必要な軽さなのかもしれない。
軽いボディは機敏だが、ドライバーへ伝わる情報量が足りない。もしクルマとの一体感を求めるなら、ポルシェ968やマツダRX-7の方が良いだろう。
Z32型のフェアレディZに乗り換える。ゲイリー・クロウザーがオーナーの、珍しいサハラゴールドで塗られた300ZXは1991年製。日産のV6ツインターボは、スープラほどではないものの、三菱3000GTと並ぶ280psを発生した。
当時のAUTOCARのテストでは、0-100km/h加速は5.6だった。今日でも充分に速い数字だ。やや着座位置の高いシートの背もたれへ、背中を押し付けてくれるほどに。
フェアレディZには、直線加速とサウンド以外の強みもある。ブレーキペダルの感触は確かで、姿勢制御にも優れる。トランスミッションのタッチも良好。今回の3台の中では、一番メカニズムのバランスが良い。
走りも最高だ。ステアリングホイールへは一貫して適度な重さが伝わり、コーナーを攻めていく自信を高めてくれる。それに続く、リアタイヤのグリップも心強い。
排気ガス規制の強化とともに姿を消した3台
当時の試乗では、3000GTと同様に、濡れた路面での振る舞いを指摘されていたが、Z32には繊細さがある。それほど心配する必要はない。ドライ路面なら完全なコントロール下に留められ、運転しやすい。
加えてZ32は、三菱3000GTより洗練された四輪操舵システムを装備する。高速域では前輪と同じ向きに、低速域では逆向きにリアタイヤが切られるが、フィーリングは自然だ。
3車3様のビッグクーペ。1990年代が終わるのと同時に、排気ガス規制は厳しくなり、英国からは姿を消してしまう。ほかの市場では、数年ほどは長く生き延びれていた。
Z32に続いて登場した350Zは、シンプルで手頃な2シーターとして代替わり。三菱3000GTは次世代の登場なく、2001年に終了。ラリーシーンでの活躍を後ろ盾に、ランサー・エボリューションが三菱のイメージリーダーになった。
ご存知の通り、スープラは20年近いブランクを開けて復活している。ボディを付け替えた、BMW Z4の兄弟として。
新車当時の価格差は小さかったものの、現在の評価は大きな差がある。一番手に届きやすいのは三菱3000GT。英国では5000ポンド(67万円)ほど出せば、手間もかかるが、充分走れるクルマが手に入る。ベストの状態でも1万ポンド(134万円)前後だ。
3000GTはデザインの主張も強い。当時の日本の先端技術を楽しめる好例だが、今回の2台やスカイラインGT-Rに近いコンセプトを持ちつつも、近年の評価に高まりはない。