トヨタ・アイロード
公開 : 2013.10.16 18:07 更新 : 2017.05.29 18:49
■どんなクルマ?
開発者・谷中壯弘の言葉によれば「モータサイクルの操縦のしやすさと、小型のファミリーカーの経済性と安定性を両立したモデル」がこのアイロードだ。このタンデム・シートの2シーター3ホイラーは、フロントの2つのホイールがティルトして操舵するという機構を持つ。駆動は、2つの前輪にそれぞれに取り付けられたモーターで行われ、最高速度は45km/hをマークする。日本仕様はもう少しエキサイティングで、その最高速度は60km/hになるという。航続可能距離は最大で50km、通常の使用であっても40kmが確保され、フルチャージに要する時間は3時間という。
このシティ・コミューターを、来年、トヨタは日本の豊田市とフランスのグノーブルで70台ずつのトライアルを行う予定だという。また、ルノー・トゥイージーほどセクシーなスタイルではないが、同じコンプトのCOMというモデルも存在する。
そのCOMとは対照的にアイロードはセクシーなスタイリングを持つ。昨年ジュネーブ・モーターショーで登場したこのコンセプト・モデルは、1950年代の蒸気機関車を思い起こさせるヘッドライトと、ティルトしたフロント・ホイール、そして水平なテールライトが特徴的だ。
ボディ・サイズは、全長が2500mm未満で、ホイールベースは1700mm。重要な全幅は850mmだ。これはモーターサイクルとほぼ同じサイズであり、クルマ1台の駐車場に4台が止められる計算だ。
メカニカル面も、そのスタイリング同様独創的だ。スレンダーなフロント・ホイールは、ティルトすることが可能なヨーク・システムが採用されている。その2つのフロント・ホイールは、シーソーをイメージしてもらえば良い。片方のホイール・ハブが上がると、もう一方のホイール・ハブが下がるというもの。直線では、2つのフロント・ホイールは同じスピードで回転するが、コーナリング中は、内側のホイールが外側のホイールより回転を落とすというコントロールが行われる。それぞれのモーターは2kW以下で、出力は5bhp以上だという。重さはおおよそ300kg。アルミニウム・シャシーが使われることによってその車重は軽くなっているが、実際のプロダクション・モデルではスティール製となることだろう。
また、軽量化のためにヒーターやクーラーは装備されない。キャビンの3/4をカバーされている全天候型で、ドアの下部分はガラス製だ。ちなみに、このアイロードはヘルメットなしで運転することが可能だ。
■どんな感じ?
谷中はそのターン・スタイルがスキーがヒントになったという。しかし、スキーのようにターン・インする度にいちいちスリルを感じることはない。外側から見ていると、いかにもスラロームをしているように見えるドライビングだが、モーターサイクルやスキーを全く知らない人でも、そのコーナリングに怯えることはなく、自然に行えるという。実際、安定感もあり、ドライビングは非常にイージーだ。
ペダルは2つ。それにロックを掛けるパーキング・ブレーキがあるだけ。ステアリングは握り変える必要がないので、ほぼ四角だ。タイト・コーナーも充分にこなすが、もしもの場合には後退用ギアもついている。
谷中によればこの開発プロトタイプは、コンセプト・モデルよりも硬い足を持っているという。タイトな場所でより効果があるのだという。
■「買い」か?
まだこのアイロードを購入することはできない。豊田市とグルノーブルの幸運な人々だけだ。ショールームにこのアイロードが並ぶのにはまだ3、4年は待たなければならないだろう。まだまだ長いトライアルを経なければならない。しかも、本当のゴーサインが出るかどうかは不確定だ。
しかし、谷中の通訳をしてくれた女性は、このアイロードが非常に魅力的だと語っていた。このテスト・デイの午後、彼女は2周ほどアイロードをドライブした後で、「何が愉しいのかがわかった」と微笑みながら話してくれたのだ。
(リチャード・ブレムナー)
トヨタ・アイロード
価格 | NA |
最高速度 | 45km/h |
0-96km/h加速 | NA |
燃費 | NA |
CO2排出量 | 0g/km |
乾燥重量 | 300kg |
エンジン | インホイール・モーター x 2 |
最高出力 | 5.4bhp |
最大トルク | NA |
ギアボックス | シングル・スピード・オートマティック |