【完璧なレストア】ポルシェ930ターボ なぜ? 海外オークションで落札ならず

公開 : 2020.07.29 05:50  更新 : 2021.10.11 09:33

1975年モデルだけの特徴

930ターボ最初期型の1975年モデルは、いくつかの特徴的なディテールを備える。

1975スタイル・インストゥルメント・パネル、スロットルペダル、テックス・タイプのドアミラー、ダッシュ上面の独立したスピーカーグリル、後席バックレスト裏面に「Turbo」ロゴが入らない、などが識別点となる。

インテリアも完璧に復元されている。1975年モデル独特のペダルを始め、シフトレバーはコンソールがなくフロアから直接生える。
インテリアも完璧に復元されている。1975年モデル独特のペダルを始め、シフトレバーはコンソールがなくフロアから直接生える。    RM Sotheby’s

このほか、リアウイングと一体のFRP製エンジンフード(1977年モデルまで)、レブ・カウンターにブースト計が備わらない(1976年モデルまで)、フロアコンソールがない(1976年モデルまで)なども初期型のポイント。

シャシーナンバー:9305700065は、イタリアのベローナにあるポルシェセンター・オートラマにデリバリーされ、最初のオーナーはスイス在住だった。その後ウィーンの著名なポルシェ・コレクターであり作家のゲオルク・コンラッドハイム博士が手に入れる。

その後、2016年に初期型911のスペシャリストのショップで、コンクール・レベルの仕上がりを目指してレストレーションに取り掛かる。この時点でオドメーターは9万2000kmを示し、ホイールからカーペットまですべてオリジナルを保っていた。

作業を始めるとモノコックの錆はほとんどなく、エンジン、ギアボックスは出荷時のままのナンバー・マッチングだった。レストレーションは費用を惜しまず細部まで徹底的に進められ、完成までに2年間を要したが、生産時以上の姿に復元されていた。

出品した現オーナー曰く、「現存する1975年の930ターボの中で、ベストのコンディションにある」という。

確かにディテールを見てゆくと、細部まで文句のつけようがないオリジナル度と素晴らしいコンディションに復元されていた。

結果は? 3410万円の壁

今回出品された1975年930ターボ。事前に発表された予想落札額は、27.5~32.5万ユーロ(3410~4269万円)だった。

ここ5年の930ターボ3.0Lモデルの落札額を見直してみると、下は1200万円からあるが、コンディションが良ければ2000~3000万円まで上昇する。

エンジンも新車以上の美しさを放つ。初期モデルにインタークーラーは備わらず、取り付けられるのは1978年モデルから。
エンジンも新車以上の美しさを放つ。初期モデルにインタークーラーは備わらず、取り付けられるのは1978年モデルから。    RM Sotheby’s

例外としては、走行34マイルの新車といえるものが39万ドル(4329万円)。1976年のアメリカ仕様プロトタイプが34.1万ドル(4263万円)というリザルトが存在する。

オークションは7月22日に入札が締め切られ、最高入札額は22万ユーロ(2728万円)に留まった。流札である。

極初期型で新車以上といえるコンディションを保つだけに、ベース車を手に入れて完璧にレストアすることを考えれば、予想落札額は妥当といえた。

しかし、コロナ禍で低迷する経済環境が足を引っ張ってしまったようだ。

オークションでは終了間際に競り合いが見られることがあるものの、ここでは最後の入札もなく、最低落札額に届かずに終わってしまったのである。その額は、あと5万ユーロ(620万円)足りないだけだった。

世界で最もコンディションの良い1975年930ターボ。再びオークションへ姿を現すことを期待したい。

記事に関わった人々

  • 上野和秀

    Kazuhide Ueno

    1955年生まれ。気が付けば干支6ラップ目に突入。ネコ・パブリッシングでスクーデリア編集長を務め、のちにカー・マガジン編集委員を担当。現在はフリーランスのモーター・ジャーナリスト/エディター。1950〜60年代のクラシック・フェラーリとアバルトが得意。個人的にもアバルトを常にガレージに収め、現在はフィアット・アバルトOT1300/124で遊んでいる。

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