【アルファだけの特別ブレンド】アルファ・ロメオ・ジュリア・スプリントへ試乗 後編
公開 : 2020.08.03 10:20
イタリア生まれのスポーツ・サルーン、ジュリアがマイナーチェンジ。部分的にはクラス最高といえないものの、ドライバーへの訴求力はピカイチだとする英国編集部。控えめなスペックのスプリントを、英国の一般道で評価しました。
後輪駆動の美点を最大限に引き出す
アルファ・ロメオ・ジュリア・スプリントのドライビング体験が素晴らしい最大の理由は、駆動力を生んでいるのが後輪だけ、というところ。前輪は、クルマの向きを決めることに徹している。とてもシンプル。
近年は、多くが前輪駆動か四輪駆動になってしまった。たとえ一般的なメカニズムでも、良くできた後輪駆動が持つ、純粋なドライビング体験の爽快さを忘れがちだ。ジュリアは、ジャガーXEほどではないものの、後輪駆動の美点を最大限に引き出している。
ジュリアを走らせると、プラットフォームがコストを掛けて丁寧に設計されていると感じる。単純に高価なダンパーを採用した乗り味とは異なる、ジュリアならではの感触。しっとりと落ち着いた乗り心地は、そう簡単に実現できることではない。
道路の轍や隆起部分を通過すれば、ボディ剛性の高さが理解できる。足まわりは、控えめな200psの馬力を、決して無駄にすることはない。
そのおかげで、2.0Lの4気筒ターボエンジンは最高出力が240psあると聞いても、疑わないほどに良く走る。同時に高速道路ではとても控えめに回転し、15.9km/Lという優れた燃費でも応えてくれる。
ジュリアはドライバーの気持ちを鼓舞してくれるスポーツ・サルーンだが、評価しにくい部分もある。電動アシストの付くステアリングは、切り始めの反応が極めて過敏だし、路面からの感触はほとんど伝わってこない。
コーナーを数回曲がればすべてを許せる
バイワイヤーで作動するブレーキも同様。ブレーキペダルの感触は希薄で、制動力も線形的には立ち上がらない。これは少々残念。
ステアリングホイールもペダルも、スポーツ感満点のデザインなだけに、余計惜しい。特に細身のステアリングホイールは、抜群に握りやすい。
日常的な運転となると、別の気になる部分も見えてくる。シフトパドルは金属製の成形品で、手触りも素晴らしいのに対し、ステアリングコラムのカバーはリサイクル・プラスティック製のよう。試乗車の場合、デジタルラジオの入りも悪かった。
小さな不満はなくはない。しかし曲線美のフロントマスクや、勇ましいマフラーが覗かせるリアを眺めた後、連続するコーナーを数回曲がれば、すべてを許せてしまう。適度な一体感のあるドライビング体験を繰り返すうちに、一切の気がかりは消えてしまう。
秀逸なハンドリングは、BMW 3シリーズに劣らないほどの充足感が得られる。ただし、満面の笑顔でコーナーの出口を見定め、電子制御デバイスが介入する手前まで。
ジュリアの電子デバイスは、わずかな自由を与えてくれない。この領域では、3シリーズのような鋭さもないようだ。電子制御を完全にオフにはできず、ジュリアをどれだけ自由に振り回せるのか、試せないのだけれど。
アルファ・ロメオ・ジュリアを選ぶかどうかは、何を優先順位の上位に並べるかで変わってくる。また、費用に対する意識にもよる。