【サイズ/パッケージ分析】ヤリス・クロス・プロトタイプ試乗 新型SUVの内装/荷室/走りを評価 いくらなら買い得?

公開 : 2020.07.30 07:20  更新 : 2021.10.09 23:22

トヨタの新型車「ヤリス・クロス」が、9月初旬に発売へ。正式発表前に、ハイブリッド車とガソリン車を、サーキットで試乗しました。ヤリスとどう違うのか、サイズ、パッケージ、走りを検証してきました。

どんなパッケージング?

text:Shigeo Kawashima(川島茂夫)
photo:Masanobu Ikenohira(池之平昌信)

ヤリスを母体に開発されたヤリス・クロスには2つの側面がある。

1つはタウンユースにも便利な車体寸法の小さなSUV。もう1つは、キャビンユーティリティに優れたコンパクト2BOXである。

正式発表前のトヨタの新型SUV「ヤリス・クロス」を取材する機会に恵まれた。写真はハイブリッドZ(プロトタイプ)。
正式発表前のトヨタの新型SUV「ヤリス・クロス」を取材する機会に恵まれた。写真はハイブリッドZ(プロトタイプ)。    池之平昌信

SUVの売りにはユーティリティも含まれるので、両者は重複する部分もあるのだが、悪路に向けた走行域の拡大も含めて2BOXよりも優れた汎用性を特徴にする。

ただし、こういったコンセプトはヤリス・クロスに限ったことではなく、VW車のTクロスを筆頭に車種増のカテゴリーでもあり、SUVブームへの便乗ではなく汎用性に優れたファミリー&レジャー用途向けのエントリーカーとして市場に根付く可能性が高い。

車体寸法は、全長×全幅×全高が4180×1765×1590mm。ヤリスとの比較では、全長が+240mm、全幅が+70mm、全高(HV 4WD)が+75mm、ホイールベースが+10mmとなっている。

全幅はSUVらしいタフネスの演出と考えていいが、75mm増の全高は実用面でも注目点だ。サス周りの設計変更による最低地上高の拡大代は約30mmなので、40mm以上は室内高の拡大に回されている計算になる。

同様に全長はリア・オーバーハングの拡大に回され、荷室奥行きはヤリスよりも190mm増大。ホイールハウス後のスペースが拡がったお陰で荷室最大幅も400mm増加している。

内装 前席/後席 ヤリスとの違い

ヤリスは主市場となるプレファミリー向けにスポーティ&カジュアルなキャラにかなりこだわった設計。

小さく引き締まったパッケージングもその演出の1つ。後席の寛ぎや積載容量にはこだわっていない。

ヤリス・クロスZの後席内装(プロトタイプ:ダークブラウン合成皮革+ツィードファブリック)
ヤリス・クロスZの後席内装(プロトタイプ:ダークブラウン合成皮革+ツィードファブリック)    池之平昌信

独自性の高い利便装備の多くは、フロントシート周りに集中している。2BOX系でファミリー用途まで求めるならカローラ・スポーツ以上へのクラスアップという具合の棲み分けを考えたキャラ付けとも言える。

対してヤリス・クロスは、ヤリスがファミリー用途において実用性で少しずつ満遍なく足りないところを補って、ファーストカーとしての資質を高めている。これが前述の車体寸法の差異なのである。

実際に後席に乗り込んで見ると、ニースペースの拡大は若干程度だが、天井やピラーの視角的圧迫感の減少と車外見晴らしの改善で、ヤリスよりも居心地向上。もてなされていると言うほどでなくても楽しい実感を共有するための配慮は感じられた。

前席周りでは視角的にもヤリスの上級モデルの印象があり、上級グレード向けと思われるが前席パワーシートも選択できる。乗降時シート退避やメモリー機能がないのは画竜点睛を欠くというやつだが、車格感とドラポジ設定の自由度の向上には有用。

乗降性向上では手動スライド仕様にヤリス同様の運転席イージーリターン機構も用意されている。

記事に関わった人々

  • 川島茂夫

    Shigeo Kawashima

    1956年生まれ。子どものころから航空機を筆頭とした乗り物や機械好き。プラモデルからエンジン模型飛行機へと進み、その延長でスロットレーシングを軸にした交友関係から自動車専門誌業界へ。寄稿していた編集部の勧めもあって大学卒業と同時に自動車評論家として自立。「機械の中に刻み込まれたメッセージの解読こそ自動車評論の醍醐味だ!」と思っている。

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